タイリーグを代表する強豪クラブの一つ、BECテロ・サーサナの新たなホームスタジアムである72年記念スタジアム。
バンコクの郊外に位置するミンブリー区に生まれたこのスタジアムの最寄駅は、タイの空の玄関口であるスワンナプーム空港と市街を結ぶ「エアポートリンク」のラックラバン駅。空港駅のすぐ隣に位置する駅だ。
下にはタイ国鉄の線路が通る、いかにもバンコクの郊外らしい閑静なエリア。
高架下には食べ物屋台がいくつか店を広げ、タイの庶民の足・ソンテオが家路につく人々を詰め込み通り過ぎていく。
「最寄駅」とは言っても、このラックラバン駅からスタジアムまではそれなりの距離がある。高架下でタクシーをつかまえ、念のため持参したタイ語表記入りのスタジアム地図を示すと、すぐに了解してくれた。
15分ほど走ると、バンコクとは思えないような田園風景の広がる小さな通りに突入する。その道をさらに5分ほど進むと、立派なスタジアムの外観が目に飛び込んできた。
周辺環境とのギャップに異様ささえ覚える、タイのスタジアムには少なからずある種の驚きをここでも感じる。チーム名とチームのロゴを伴って堂々と屹立する新スタジアムへ、ユニフォーム姿のサポーターたちが吸い込まれていく樣に自然と高揚感が高まった。
当日券を求め、チケット窓口へ向かうサポーターたち。
クラブショップでは、チームカラーの明るい赤が目に鮮やかに飛び込んでくる。
スタジアムの外、ふと見上げると試合開始を待つサポーターたちの頭上を、少し気がかりな雲が覆い始めていた。
(後編へつづく)