マラリア原虫が血中に侵入
夜明けから日没までに活動するハダマラカを介して単細胞生物であるマラリア原虫が血中に侵入することで引き起こされる感染症。前回のデング熱が、昼間に活動するヤブカを媒介するウイルス性であるのと大きく異なる。年間の感染者数は世界全体で3~5億人ともされている。
発症すると40度前後の高熱に見舞われる。比較的短時間で熱は下がるが、周期性を持って高熱が繰り返されるケースが多い。体力の低下とともに合併症を引き起こし、死に至ることもある。
周期的な高い発熱が特徴
マラリア原虫は血中に侵入後、赤血球内で分裂を繰り返して成長。新たな原虫が赤血球を破壊して血中に侵入する時に発熱を引き起こす。この原虫の発育サイクルの違いによって発熱周期が異なってくる。1)三日熱マラリアは48時間おき、2)四日熱マラリアは72時間おき、3)卵型マラリアは50時間おき、4)熱帯熱マラリアには周期性はない。
このうち、タイで確認されているのは、1)三日熱マラリア(全体の約31.1%)と2)四日熱マラリア(同約0.2%)4)熱帯熱マラリア(約33.9%)の3種(その他不明が33.3%ある)。熱帯熱マラリアは治療をしなかった場合、死亡例も報告されている。三日熱マラリアと卵形マラリアは一部の原虫が肝細胞内に長期間潜伏することもあるという。
タイ近隣諸国と発症例を比較してみると、意外にもタイが突出して高いことに驚く。ハダマラカはバンコクなどの都市部には存在せず、屋外を好み、夕方から朝方にかけて吸血する。タイ北部や東北部にはまだまだ森林が残っており、蚊に刺されない注意が必要だ。
熱帯に位置する南国タイ。穏やかな気候ながら、旅行者にとっても滞在者にとってもちょっぴり心配なのが、病気に罹った時の対応。海外旅行者保険や医療保険など万が一時の対策は万全に採っていても、どんな病気が多いのか、どんな症状に見舞われるのかまでは意外と知らない。そこで現地の病院に取材してまとめてみたのが本稿。名付けて「タイの病気」。短期連載で一挙ご紹介!