タイ進出21年目の「スタバ」が勢力拡大の予感
経済の成長と共に、緩やかに発展を続けるタイのコーヒー文化。巷には趣向を凝らしたカフェが溢れ、現在はアジア第6位のコーヒー生産国へと成長。そんな中、タイの飲料業界最大手「タイ・ビバレッジ(THBVE)」傘下の飲料メーカー「コーヒーコンセプツ・タイランド」が、米国コーヒーチェーン「スターバックス」から総額157億バーツ(約540億円)で経営権を買収することを発表しましたね
同メーカーは、同じくTHBVE傘下のシンガポール企業「フレイザー&ニーブ(F&N)」と、香港やマカオ、ベトナムなど、各国でスターバックスの独占事業ライセンスを保有する香港の「マキシムズ・ケータラーズ」が共同出資する合弁会社です。
知られていないTCCグループ
地元紙によると、F&Nはもともと牛乳やホイップクリームといった商材を供給するサプライヤーの一つで、今回の買収によりさらにスターバックス関連の業務領域を拡大したい考え。とその前に、皆さんは、THBVEの親会社である「TCCグループ」をご存知でしょうか。ブランド名にも使われるCPグループやサハ・グループの方がよく聞くでしょうがが、タイで生活をする上で、TCCグループの恩恵を受けない日はないほど、グループの多くが生活に密着しているんです。
中核企業THBVEは前述のとおり、ビールのほか、水、スポーツ・栄養ドリンクといった飲料大手。傘下には、緑茶飲料と日本食レストランを展開するタイ上場会社オイシ・グループを持ち、工業団地を中心にレンタル倉庫サービスを展開するTICONのほか、タイ小売り大手ビッグCスーパーセンターも2016年3月にフランスのカジノ・グループから買収したばかり。他にも、印刷・メディア大手のアマリン・プリンティング、不動産関連ではインペリアルグループ、日本人にもお馴染みの商業施設「ゲートウェイ・エカマイ」や「アジアティーク ザ リバーフロン」も同グループに含まれます。
まさに、コングロマリット企業のTCC。17年版の米経済誌「フォーブス」が発表した世界長者番付でも同グループ総裁のチャルーン氏が堂々の60番(タイNo.1)で、総資産は5,916億バーツ。M&Aによる急拡大を見せるTCCから今後も目が離せず、今回も、その潤沢なビジネス基盤を活用し、より一層店舗網の拡大を図っていくことが予想されますね。
スマート経営目指すスターバックス
一方で、スターバックス側は近年、世界各国で経営権の売却を加速しています。ケビン・ジョンソンCEOは「今後はより大きなビジネス効果を得られる中国市場に注力していく。本社の負担を減らし、同市場に一極集中するためにも取捨選択は欠かせない」とし、2018年にはフランスなど欧州4カ国で営業権を手放しています。
1998年にタイに初上陸したスターバックスは現在、全国に370店舗以上を展開。ローカルチェーンの「カフェ・アマゾン(約2510店舗)」「インタニン(約500店舗)」に次いで、国内第3位の事業規模を誇ります。進出当時、外食時の飲み物と言えば甘ったるいタイティーやアイスコーヒーが主流だったタイにおいて、新たなコーヒー文化を開花させ、流行を牽引するスターバックスがどうなのるか、注視していきたいですね。