2010年11月、アウン・サン・スー・チー氏(国民民主連盟(NLD)議長)の自宅軟禁解除に続き、2011年3月にテイン・セイン大統領と中心とする新政権が誕生した。民主化・国民和解に向けた改革が進められ、今、世界が注目する「ミャンマー連邦共和国」。東南アジアのラスト・フロンティアと呼ばれるミャンマーの最新事情と魅力に迫る。
そもそもミャンマー連邦共和国とは
現在のミャンマー連邦共和国
北部はヒマラヤ山脈の一部、南部はアンダマン海に面し、国境は西部はバングラデシュとインド、北部は中国、東部はタイ、ラオスに接するミャンマー連邦共和国。首都はネーピードー。時差はタイよりマイナス30分となる。【ページ下部マップ参照】
ミャンマーの略歴は、諸部族割拠時代を経て11世紀半ば頃に最初のビルマ族による統一王朝(パガン王朝、1044年~1287年)が成立。その後、タウングー王朝、コンバウン王朝などを経て、1886年に英領インドに編入され、1948年1月4日に独立を果たす。
1998年、全国的な民主化要求デモにより26年間続いた社会主義政権が崩壊したが、国軍がデモを鎮圧するとともに国家法秩序回復評議会(SLORC)を組織し政権を掌握した。なお、1997年にSLORC は国家平和開発評議会(SPDC)に改組している。
2011年3月にテイン・セイン氏が大統領に選出され、新政府が発足、SPDCから政権が委譲された。2012年4月1日に議会補欠選挙が開催され,スー・チー氏率いるNLDが45議席中43議席を獲得している。
民主化が進むミャンマーに対し、日本政府は2012年4月に経済協力方針を変更し、これまでBHN(基礎的生活分野)に限定していた支援分野の拡大を決めた。欧米諸国もミャンマーが進めている政治・経済改革を評価し、米国は2012年11月に宝石一部品目を除くミャンマー製品の禁輸措置を解除し、EUも2013年4月に武器禁輸措置を除く対ミャンマー経済制裁を解除。東南アジアのラストフロンティアとして、経済発展が期待されている。
最近のミャンマーに対する各国の動き
今年1月に麻生太郎副総理兼財務相がミャンマーを訪問している。安倍新政権の閣僚として最初の外国訪問となり、テイン・セイン大統領、ウィン・シェイン財務歳入相と会談。約5000億円に上る延滞債務問題の解消と、新たな円借款500億円の供与を改めて表明し、ミャンマー支援にかける日本政府の強い意志を示した形となった。
また、5月には安倍晋三首相が訪問、テイン・セイン大統領と会談している。首脳会談では、910億円の政府開発援助(ODA)の実施や2000億円の対日債務の解消を約束。「新しい国造りを官民の力を総動員して応援していく」と述べている。
米国は2011年11月にヒラリー・クリントン米国務長官が訪問。約50年ぶりに米国務長官がミャンマーを訪れたことになる。また、その1年後の2012年11月、バラク・オバマ大統領が米大統領として初めてミャンマーを訪問。ヤンゴンにてテイン・セイン大統領と会談し、今後2年間で1億7000万ドル(約138億円)の援助を表明した。1988年の民主化運動弾圧以来、悪化していた両国の関係にとって歴史的な転機となった。
2013年6月には、楊潔篇中国外交統括もミャンマーを訪問している。また、テイン・セイン大統領も積極的に日本や欧米諸国を訪問しており、変革期を迎えたミャンマーに今、世界の注目が集まっている。
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ミャンマー連邦共和国とは?
面積:68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)
人口:6,242万人(2011年、IMF推定値)
首都:ネーピードー
民族:ビルマ族(約70%)、その他多くの少数民族
言語:ミャンマー語
宗教:仏教(90%)、キリスト教、回教等
政体:大統領制、共和制
元首:テイン・セイン大統領(2011年3月30日就任・任期5年)
国会:二院制
上院(民族代表院) 定数224(選挙議席168、軍人代表議席56)
下院(国民代表院) 定数440(選挙議席330、軍人代表議席110)
主要産業:農業
名目GDP:約514億ドル(2011年度、IMF推定)
一人当たりGDP:824ドル(2011年度、IMF推定)
経済成長率:6.3%(2011年度、IMF推計)
物価上昇率:5.0%(2011年度、IMF推計)
失業率:4.0%(2011年度、IMF推計)
総貿易額
輸出:約81億ドル
輸入:約77億ドル
(2010年度(予測))
主要貿易品目
輸出:天然ガス、豆類、宝石(ひすい)、チーク・木材
輸入:石油、機械部品、パームオイル、織物、金属・工業製品
主要貿易相手国
輸出:中国、タイ、インド、香港、シンガポール、日本
輸入:中国、シンガポール、タイ、日本、インドネシア、インド
(額の順,2010年度)
通貨:チャット(Kyat)
為替レート:100円 = 966.99チャット(2013/07/09 時点)
【出所】日本国外務省HPより
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