何度言っても全然通じないのです…というお問い合わせがよくあります。タイ語の書籍コーナーに行くと、【入門!】【簡単!】【すぐわかる!】というキャッチフレーズのタイ語テキストがたくさん並んでおります。
キャッチフレーズは『習う人視点』
以前、書店に並んでいるタイ語テキストの種類をデータ分析したのですが、圧倒的に多かったのは『入門書』『会話本』です。当然、お金を出して買うのは『勉強したい人』なので、そういう人が「買いたくなる」タイトルを付けるのは当たり前です。ですが、『勉強したい人=あなた』がその本で「何を得たいのか」ということをもう少し吟味する必要があるのです。
多くの会話本には、色々な言い回しや表現が載っています。著者は本当に頭を絞って、何がベストな表現で、どうすればいいのだろうかと悩みぬきながら原稿を書くものです。実は通じるかどうか、ということは「テキストに載っている言い回し」を覚えることにないということが、多くの「通じない」を生み出していることがわかります。
「簡単」に「すぐできるように」なることであなたを引き付けたいので、「カタカナで」読んでしまえばいいのだよ、というのです。
「通じている」のではなく「理解してもらっている」という視点
いくらあなたがその本のタイトル通り、「簡単に」「すぐできるように」タイ語をマスターした!と思ったとしても、そのタイ語を聞くのはそのタイトルを考えた出版社の人ではなく、タイに住んでいるタイの人たちとコミュニケーションができないと、その「簡単」も「すぐできるように」ということも意味がないわけです。
タイ語というのは、残念ながらインドネシア語などのようにカタカナ読みをして通じる言語ではありません。「でも、俺、ちょっと本読んだだけで店とかで注文とかできるぜ」「お姉ちゃんとも話せるぜ」とここまで読んで思っている方もおいでだと思います。
そうなんです。おかしいと思いませんか?カタカナ読みで通じる言語ではないはずなのに通じちゃう。実はそれって「タイ人が理解してくれている」のです。発音も、声調も違う音の連なりを「あー、きっとこう言っているのだろうな」と推測してくれていると言ったほうが正しいのです。
外国人がよくいくお店などで働くタイ人の多くはそういった「類推能力」に自然と長けていくようになります。その結果、「カタカナタイ語」でも「お~、通じてるじゃん!」となるわけです。多くのタイ語学習者の人が「観光」を目的にタイ語を学習し、タイ語を話すので、そういった「類推能力に長けた」人と話すことが必然的に多くなります。
こちらでお勤めの方であったとしても「同じ言い回し」を「同じ人」と繰り返していると、相手はあなたのタイ語の「くせ」を自分で覚えて、タイ人側で自動変換をしてくれているようになります。
じゃぁ、外国人と話すことなど人生でほとんどないタイ人といきなり話してみたら?初めて会ったタイ人に「いつも言ってわかってもらえるセンテンス」が通じなかった、という経験は少なからずお持ちなのではないかと思います。
それじゃあタイ語を「簡単に」「すぐできるように」なったとは言えないのではないか、と思うのです。
「通じるタイ語」とは、初めて会った普通のタイ人と問題なくやり取りができる、ということ、と定義すれば、自分のタイ語についても気付きが得られるのではないかなと思っています。