日本人の国民食とも言われるラーメンとカレーライス。ラーメンは戦後、カレーライスは明治初期から食べられるようになったといわれ、国民食といわれる割にはその他の日本食と較べ歴史はあまり長くない。タイでも日本食がタイ人向けレストランで食べられるようになって30年程度。現在は、ブームを通り越し、日常的に口にするメニューとなった。今後ラーメンやカレーがタイ人の国民食になる日が来るのだろうか。
ラーメンはいまやタイ人のあいだでも大人気メニュー。街中にラーメン店が乱立し、日本からの新規上陸の話題が毎月のように聞こえてくるが、カレーはどうだろう。すでに2008年以来20店舗近くを展開するCOCO壱番屋はほぼどこに出店しても行列ができる盛況ぶりだが、これ以外にタイ人に人気のカレー屋というものはあまり聞かない。
タイ人はカレーが嫌いという都市伝説を見事に打ち破ったCOCO壱番屋だが、これに続くタマが出てこないのが不思議なところ、と思っていたところに、今年になって日本の石川県から金沢カレーという変化球が投げつけられてきた。
ゴールドカレー
在バンコク日本人の人気者「とっぴー」がプロデュースする金沢カレーの専門店。辛さはほとんど感じられない味付け。食べたことないけど、カレーの王子様ってこんな味なんだろうか。その代わりボッテリしたルーの濃厚度はかなり高い。放っておいたらご飯とルーが混ざらないレベル。あと、ルーに対してご飯が多過ぎとの指摘もあるが、これがデフォらしい。
深夜2時まで営業していたり、日替わりで割り引きメニューがあったり、お味噌汁がおかわり自由だったりとかゆいところに手が届くようなサービス精神はとっぴーの人柄か。
COCO壱番屋にくらべるとトッピングの種類が少ない。少ないは少ないで構わないのだけど、それらのほとんどが揚げ物なところが、メタボ気味のオヤジには辛い。深夜の〆としては厳しい。試しに日本のゴールドカレーのウェブサイトを見てみたら、やはり揚げ物だらけ。金沢の人はどんだけ揚げ物が好きなんだろう。
すき家
かなり無難な味付けのカレーかと思いきや意外にスパイシーで特長のある味付け。看板をよく見れば、そこにはすき家の文字とともに牛丼と同じくらいの大きさでカレーの文字が並んでた。すっかりすき家は牛丼屋だと思っていたが、じつは牛丼とカレーのお店だったことにいまさらながら気がついた。
カレーライスはミニ、並、大盛のサイズ以外に温玉、チーズ、唐揚げ、牛丼の肉が選べる。タイのすき家のオリジナルトッピングのパクチーやプーパッポンカリーは残念ながら、選べない。牛丼と同じく69Bでこのカレーが食べられるのはありがたい。実際、個人的には牛丼にしようか、カレーにしようか迷うレベル。
牛野家
あまりにフツー過ぎるカレーライス。市販のカレールーの中でも最もオーソドックスなやつをそのまま使ったような味。黄色っっぽい見た目も夏のキャンプで食べたカレー。でも、日本人の99%くらいがイメージするカレーライスという食い物を具現化したようなメニューは基本のカレーと呼ぶにふさわしいかも。
カレーライスは2種類。ビーフとポークが選べる。これ以外にカレーうどんのメニューもあり。でも、牛野屋に行くときは牛丼でもなく、カレーでもなく豚丼を迷わず注文してしまう。やっぱ、牛野家といえば豚丼。
CoCo壱番屋
冒頭でも書いたとおり、タイの日本式カレーチェーンの草分け的存在。レストランフジを展開するフジグループをタイ側パートナーにしたことが功を奏し、バンコク周辺の大手ショッピングモールに次々と展開。 基本的にカレールーはすべてのメニューで同じだが、数多くのトッピングで幅広いメニュー構成をカバー。
日本のメニューにはないオムカレーやスパゲティなどタイ独自のメニューも用意される。店舗によってはスパゲティがないお店があるが、スパゲティメニューがあるお店ではナポリタン。最近できたゲートウェイエカマイのUCCのナポリタンよりオススメ。
MoMo CuRRY
COCO壱番屋に続き登場した日本人経営のカレー専門店。ご飯とカレーが別々に運ばれてきてルーはこのお店オリジナルの陶器のポットに入ってきたり、カレーの具によってカレールーを変えたりと日本人的なこだわりをもったカレーライスを提供する。店内にもそのこだわりの内容が日本語タイ語併記で壁に大きく書いてあったりしている。
こだわった内容の割には全体的にCoCo壱番屋より価格を抑えたメニュー構成。カレーライスという意味ではCOCO壱番屋やゴールドカレーよりも個人的には好きなタイプ。スパゲティがメニューにないCOCO壱番屋と並んでたら、MOMOカレーを選ぶ。もっと話題になって人気が出ても不思議じゃないのはずなのに。
東京カレー
タイ人が経営する日本式カレーライスの店。お味の方はかなりスパイシーだが、コク的なうま味はほとんど感じられない。日本のカレーをまねしつつ独自にいろいろと工夫を重ね結局は失敗しちゃったような味付け。市販のカレールーの方がマシかも知れないレベル。
COCO壱番屋並みにいろいろなトッピングを選べる。オープン当時はカレーライス一本勝負なメニュー構成だったがその後、日本風のスパゲッティやらラーメンやら丼ものを追加してなんだかわけがわからないメニュー構成になってきた。試しにラーメンに挑戦してみたが、茹で過ぎの麺、ぬるいスープ、典型的なタイ人経営のラーメンだった。
今回のまとめ
タイでは最大手の日本食チェーンである「フジグループ」のCOCO壱番屋に対し、タイ国内に大手企業のパートナーを持たないゴールドカレーが挑戦する構図はどう見ても無謀であると感じてしまう。しかし、タイ国内最大の外食チェーンKFCが400店舗を展開することや、日本と違いこれから間違いなく成長していく市場性を考えれば、「まさか?」が「もしや!」に変わる可能性を秘めている。
また、現在タイ国内で最大のラーメンチェーンであり、店舗数では「フジグループ」を凌駕する「8番ラーメン」の本社はゴールドカレーと同じく日本の北陸地方、石川県金沢市にある。こんなことを考えると、なぜだか、その期待もさらに高まったりするが、これは単なる妄想かこじつけかもしれない。