米国通商代表部(USTR)が毎年公表している「スペシャル301条報告書」をご存知だろうか。スペシャル301条とは、米通商法の知的財産権に対する体外制裁について定めた条項で、そもそもは貿易障壁の現状を米大統領や連邦議会に報告するよう求めた制度。ところが、事実上の「世界基準」となっているのが現状で、国際的なコンセンサスを経ない米国独自の判断だとして一方で強い批判もある。タイは、こうした「ブラックリスト」の常連国で、このほど発表された2013年報告書でも「優先監視国」とされた。タイの実情について調べてみた。(写真は知的財産局のfacebookから)
スペシャル301条報告書では、知的財産権保護について「問題あり」とする国を重い順に「優先国」「優先監視国」「監視国」に区分している。
2013年報告書では、最も問題があるとする「優先国」はウクライナ1カ国。「優先監視国」として、アルジェリア、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、パキスタン、ロシア、タイ、ベネズエラの10カ国が並んだ。「監視国」はブラジル、カナダ、エジプト、イスラエル、フィリピン、ベトナムなど30カ国。
タイの「優先監視国」は2007年以降、6年連続。映画などの無断複製(海賊版)やブランド品の商標侵害などが問題とされている。「優先国」に指定されると、米国との協議が始まり、不調に終わると制裁手続が発動される仕組み。
「優先監視国」や「監視国」に指定されただけでは直ちに不利益は生じないが、何よりも国際的なイメージが悪い。米国の人気歌手レディー・ガガが「バンコクで偽物のロレックスを買いたい」とツイートした“事件”は記憶に新しい。
ただ、タイ政府も手をこまねいているわけではない。4月には商務省知的財産局内に特別センターを設置。知的財産権や著作権の侵害をめぐり、程度の著しい侵害者については歳入局やマネーロンダリング取締局に通報したうえで50万バーツ以上の資産を没収できる仕組みを始めた。
また、今秋中にも、映画館での無許可録画に罰則を設けたり、インターネット上の著作権等の侵害に対して取り締まる関連法規の成立を目指し、汚名返上に意欲を見せている。
米国主導に穏やかでないところもあるだろうが、知的財産権保護に向けたタイの取り組み。ちなみに日本も1990年代に「優先監視国」や「監視国」とされた時期があった。