タイで「コーラと言えばペプシ!」という声もあるほど一般消費者の間で親しまれてきたペプシコーラ。これまでタイのボトリング会社「スームスック(เสริมสุฃ)」が製造・販売権を独占してきたが、明日11月1日をもってライセンス契約が終了する。ことの顛末は、スームスック社からの原液値下げ要求を販売元の米ペプシコが撥ねつけ、逆に敵対的買収(TOB)を仕掛けてきたことがきっかけだった。半ば“喧嘩別れ”となり、別々の道を歩むことになった両社。今後はライバルとしてのバトル第2幕が待ち構えている。
1950年代から半世紀を超え蜜月状態にあった両社の「亀裂」が深まったのは、洪水騒動のあった昨年2011年。翌年のライセンス更新を前に、スームスック社が「原液代が高すぎる」などとして10%近い値下げを要求したことが発端だった。いわば「身内」の謀反に驚いたペプシコ。それまでの友好関係を一新。言うことを聞かぬスームスック社を子会社化するため、TOBという強攻策に打って出た。
これに強く反発したのがスームスック社の経営陣だった。今年4月に開かれた取締役会、それに続く株主総会でペプシコとのボトラー契約を解除することを決め、ペプシコ側に通告、全面対決となった。ペプシコ側のTOBは他の株主の賛同を得られず不調に終わったものの、両社の軋轢は決定的となり、明日の契約満了を迎えることとなった。
ぺプシコ側は新たなライセンス先との提携で早期の量産体制を回復したいとする。だが、スームスック社が持つロジスティック水準をカバーできるボトラー会社を直ちに見つけられる可能性は低いというのが業界の共通した見方。ライバルのコカ・コーラが2億バーツ(約5億円)もの巨費を投じ、年末の販促キャンペーンを強化する動きを見せており、当面はタイ市場で苦戦を強いられそうだ。
一方のスームスック社。一連の騒動に対する世論を見方につけ、一気に飲料市場でのシェアを伸ばしていこうというのが現在の基本的な戦略。その一貫として、新ブランドとなる炭酸飲料「est」を投入、ペプシ、コカ・コーラの二強市場に割って入り込もうともする。ただ、長年にわたって慣れ親しまれてきたペプシに代わる飲料商品を消費者がどこまで受け入れてくれるかは未知数。このため、栄養ドリンクのレンジャー・ビバレッジ社を買収、同市場にも参入する動きも見せている。