「ならば自分でやろう!」と始めたFancy House “RURI”
タイ在住25年半。鉄鋼関係の商社マンだった夫が脱サラして起業したのが22年半前。20年前には、「タイの旅行の思い出になれば…」と、土産物などを扱う雑貨店を自ら開業した。
何気なく思ったのがきっかけだった。派手な花柄や木彫りの大柄な額縁など、よくありがちなタイの土産物。「もう少し気の利いた、日本人の好みにあったものはないのかしら…」
思ったら、何でもやってみたくなるポジティブな性格。「ならば自分で雑貨店を開いてみよう!」と始めたのが「Fancy House “RURI”」だった。
ゆっくり店内を見てもらいたい
初めのうちはスーツケースに雑貨を詰め、行商よろしくお客さん宅を訪ねたことも。納期通りに品物が届かず、問い合わせに走り回ったこともあった。何よりも商習慣の違いに戸惑った。説得するのに、また一苦労だった。
それでも、次第に口コミで輪が広がると、店舗にもたくさんの日本人客が集まるようになった。お客がお客を呼ぶ相乗効果。
お客さんにはゆっくり店内を見てもらいたい。「来て良かったな」と思ってもらえれば、それでいい。コミュニケーションが何よりも大切。お茶を用意して、何時間でもおしゃべりをするのが好き。
セミナーやフリーペーパーの原稿依頼も引っ張りだこ
店内には、お洒落なコースターや南国らしいペンケース。少数民族の村に伝わる特産品も扱う。学生時代、児童福祉に接した経験も活かし、童話に出てくる赤ずきんちゃんや白雪姫、人魚姫など手製の人形を取り揃えたこともある。
雑貨店の一方で、セミナー講師やフリーペーパーの原稿依頼なども引っ張りだこ。昨年末には、日本人会の「タイを知る会」から依頼を受けて、タイに伝わる「ラーマキエン物語」について講演を行った。
もともと教師志望。だから、どちらかと言えば人前に出るのが好きなほう。マイクを握って話すのも苦にならない。終わった後の達成感が何よりも心地よい。
雑貨店も講演の手伝いも続けてみたい…
タイ25年の前は、香港で6年を過ごした。かつての海外駐在員は赴任後、数年間は当該国からの出国ができなかった。食材の入手も今ほど容易ではなかった。赴任前、夫の会社で鳥のさばき方、魚の卸し方を教えてもらったことを覚えている。
それだけに赴任中は無我夢中だった。3年が過ぎ、ようやく日本に一時帰国できたときは、懐かしさと感動で涙が出そうになった。
そうしたことも今は良い思い出。時々、若い人にも話すけど、聞いてもらうだけで十分。この25年で日本もタイもすっかり豊かになった。
雑貨店も講演の手伝いも、当面は続けるつもり。優秀な「後輩」も育って来てはいるが、もうしばらくは自身で身体も動かしてみたい。「書く」仕事も、もう少し増やしてみようと思っている。
タイで在留届を提出済の日本人は最新の2012年統計で約5万人。企業などの駐在員や永住者、その家族などが多くを占め、滞在する男性の多くが仕事を持って暮らしている。女性についてはビザの関係から就労が難しいと一般的に理解されているが、実は「働く」女性は決して少なくない。新企画「タイで働く女性たち」では、タイで仕事やボランティア活動などに就き、活躍する女性たちを追う。