復旧復興支援に奔走する毎日
甚大な被害をもたらした昨年のタイ大洪水。間もなく1年を迎えようとしているが、被災地では今なお精力的な復旧復興事業が続いている。
アユタヤ県ロジャナ工業団地。ここで現在、事務機器の納入などに奔走しているのが「コクヨ・インターナショナル・タイランド」に勤めるSales Excutive Office Solutionの木村晴美さん。工場敷地からの排水、洗浄、電気・水の確保、製造ラインの再稼働…。こうした復興復旧事業の最後に木村さんたちの仕事がある。
「デスクや椅子、棚を据え付けるといった作業は一番最後。工場やオフィスがようやく使えるようになって、それから私たちの出番が始まります」と多忙な日々を送っている。
例年ならば1年の後期を迎える今ごろは、新規進出案件などの相談でもちきり。ところが今年は、通年に渡って洪水被害の復興支援事業が待っている。「お客様にとってみれば、1日でも早くラインを整えて事業を再開したい。待っていられないという気持ちがひしひしと伝わってきます。まさに納期との戦いです」。そう語る木村さんだが、穏和な表情から笑顔が消えることは決してない。
「あの時を忘れないために…」
木村さんにとって印象深い出来事の一つとなったが、最近、請け負ったというメーカーからの仕事。「工場のエントランスに光のモニュメントを設置してほしい」というものだった。青色に燦然と輝く光のバー。高さ2.8メートルは、この工場を飲み込んだ濁流の水深とちょうど同じ。
「今後どんな逆境が訪れても、これを見るたびに乗り越えていくんだと、思いを新たにしていきたい。その象徴として制作してほしい。そういったお気持ちからのご注文でした。思わず、胸が熱くなりました」
青色のモニュメントは、このほど完工し、工場の玄関口に展示されている。
出身はインテリアデザイナー
大阪出身。家族がタイで起業していたことに伴い、2009年8月に来タイした。大阪市立デザイン研究所を卒業後、インテリアデザイナーとして主にアパレル関連の仕事に従事。コクヨ本社の店舗事業部の立ち上げに関わったことがあり、その縁で同社のタイ法人への赴任となった。
営業職は初めてというが、顧客に不安を感じさせない。「人と会うのが好き。その意味ではインテリアデザイナーも営業もあまり変わりはありません。もっと早く営業の現場を知ってもよかったかも」と笑う。
受け持ちは現在30社ほど。この数を一人で担当する。1日あたりの訪問実数が4、5件となるのもざら。だが、「まだまだ仕事の伸び代はある」と余裕さえ感じさせる。「仕事が面白くて楽しい」。充実した毎日を送っている。
「めっきりと怒らなくなった?」
「タイに来てから怒ることがめっきり少なくなった」と話す木村さん。「タイの寛容さになれたのでしょうかねえ。見習わなければなりませんね」とも。
最近は趣味で始めたヨガに凝っているとか。毎週日曜日、ベンジャシリ公園で開かれているジュニアの空手指導にもボランティア参加。ヨガの魅力を勧めている。「ヨガを始めて自分も変わりました。清々しい気持ちになることができます」。地域貢献としてのボランティア活動にも積極的に取り組んでいる。
タイで在留届を提出済の日本人は最新の2012年統計で約5万人。企業などの駐在員や永住者、その家族などが多くを占め、滞在する男性の多くが仕事を持って暮らしている。女性についてはビザの関係から就労が難しいと一般的に理解されているが、実は「働く」女性は決して少なくない。新企画「タイで働く女性たち」では、タイで仕事やボランティア活動などに就き、活躍する女性たちを追う。