東南アジアで最も他国の人種が交差する場所タイで、長年に渡り日本人のバンド活動を支援している1人の日本人がいる。話し好き、笑い好き、そして、誰よりもライブバンドとお酒を愛するいぶし銀の男、「濤川 憲紀(Noritoshi Namikawa)」。
バンコクでのバンド活動の始まり
2005年頃からバンコクの友人同士でアマチュアバンドを結成。当時は主に知人の結婚式や誕生会などを演奏発表の場として活動していたが、次第にそれ以外のライブの場を作りたいとの思いでタイ国内で本格的なバンドイベントのオーガナイズを開始。
活動当初はスクンビット界隈の欧米人が集まるバーなどに興味を持ったが、当時は外国人の輪の中に入っていくような自信がなく、気づけば三年ほど途方にくれていた時期もあった。。。しかし、その3年間、「日本人が集まるライブイベントをやりたい」という思いは消えなかった。
タイ最大の夜遊びスポットRCAの衝撃と「J-LIVE」の立ち上げ
週末は10000人近いタイ人が集まるともいわれるバンコクでも人気のナイトスポットRCA。彼がその地に足を踏み込んだ衝撃が後に「J-Live」立ち上げのきっかけとなる。
初めてRCA内のライブハウスを訪れた時、そのイベント会場の広さや機材面などの充実さなどに感動し、まず直感的に仲間と一緒にここを借りてやってみようという話になった。しかし、現実はそれほど甘いものではなかった。
2000年初頭のタイポップブームからタイ国内の音楽業界はさらに加熱し、既にRCAというエリアはインディーズバンドの活動の場として激しい争いも始まっており、場所代など予算問題も重って断念せざるを得なかった。
ローカルでの発表場所の獲得において日々様々な思いが交差し、コミュニケーションなどの悔しさを感じながらも「日本人ミュージシャンの活動の場を作りたい!」という一心で、活動の場を毎晩のように探し続けた・・・そして、2008年11月15日に記念すべき第一回目となる「J-LIVE」を立ち上げた。
それから毎年、たとえイベント運営が厳しくとも日本人が奏でる音楽を披露する場を作るためにとにかく各所を動きまくった。それ以降、J-LIVEは毎年11月に開催する定例行事となり、今年はその第6回目を迎える。
異国での日本人との出会い「Fujiyama Night」の始まり
濤川氏は「J-LIVE」という毎年一度のタイに住む日本人ミュージシャンの発表の場を作りあげた。以後、都内の貸スタジをなども利用しながらタイ国内で活動する日本人バンドの活動環境をさらに充実させていった。
そんなある日のこと、スタジオですれ違った欧米人がオーガナイズするライブイベントに呼ばれる事になった。詳しい話を聞いてみるとイベントの出演バンドは5バンドで全てが日本人バンド。
ライブ当日、そのバンドクルーと実際に顔を合わせてみると、全員が長い間タイで活動を続けているようで音楽のレベルも高く、自分たち以外にもこんなに沢山の日本人バンドがバンコクで活動しているのかと感銘を受けた。
その後、この外国人オーガナイザーをきっかけに様々なライブイベントに呼ばれ、気がつくとライブの事よりも魅力的なイベント会場自体が気になるようになった。
「これはJ-LIVEにもつなげられるし、ここで日本人バンドを集めてライブできたら面白そうだ!」との思いで早速店のオーナーに毎月の定例イベントとして交渉し、即日店舗から了承を得ることが出来た。これを期に2010年5月15日から毎月のバンドイベントとして、「Fujiyama Night Vol.1」がスタートすることになった。
海外で音楽を体験すると仲間が増え新しい発見が見つかる
純粋に音楽の素晴らしいところは人種問わず様々な人たちと繋がれる。それが知人などにも広がってどんどんコミュニティーを膨らまし、やがて各個性に分散していくことがやはり音を楽しむ上での一番の面白さではないだろうか。
しかし、時にそれは個性的、独創的であるがゆえに、一部の音楽好きだけの楽しみになることも多い。
そんな中で、バンコクのバンドイベント「Fujiyama」と「J-LIVE」は、日本人が開催しているということで、これまでバンドを見たことがない人たちにも安心して来場させるという、特殊なフィルターの役割も果たしているように見える。
いくつものバンドを掛け持ちしながら懐かしのカバー音楽を楽しむミュージシャン、自らの音楽に集中し独自のスタイルを磨き上げていくオリジナルバンド。音楽ジャンル問わず、様々な人達と新たな感覚を共有することが海外で日本人バンドを見る上での大きな楽しみ。
これまで一度もライブイベントに行ったことがない方も、この機会に是非一度J-LiveやFujiyamaのライブ会場に足を踏み入れてみてほしい。
2013年のJ-LIVEを控えた濤川氏より:
間違いなくタイで音楽通して自分は日本に居た時よりも沢山の仲間と知り合いが増えました。もっと日本の地方のミュージシャンと混ざり合い、さらにこういった機会を沢山増やしていければと思ってます。何より知らない世界だったからこそ、そこに新たな楽しみや面白さの発見があるのだと思ってます。バンドの皆さんも、イベントを運営する仲間も、そして、初めてのお客様も6回目になるJ−LIVEを一緒に楽しみましょう。JLIVE 2013のポスター