世界で最も多くの日本人選手がプレーする海外リーグであり、日本での注目度も年々高まっているサッカーのタイリーグ。
今年は選手のみならず日本人の監督も次々誕生している。今回はそのなかの一人、ランシットFC・丸山良明監督のインタビューを3回に分けてお届けする。最終回の今回は、丸山監督の具体的なチーム作りのビジョンに迫る――。
手探りの「チャレンジ」の日々
――選手の育成と結果の両立という難しい立ち位置で、実際にどういうチーム作りをしていますか。
「タイに5年いて思うのが、まずはスタッフのまとまりが大事ということ。負ける、難しいことが起きる、逃げる、バラバラになる、それでダメになるんです。
スタッフがどういう船を作るかが重要ですから、まずはスタッフと話しましたね。キャンプの時には選手一人ひとりと、自分の立場や夢、そのために何をするか、などについてよく話もしました」
――やり方としては「日本流」をタイに合った形で落とし込もう、という感じなのでしょうか。
「『日本流』というより、どうやったらこいつは伸びるのかな、と見ている感じですね。タイの監督のやり方を見ていると、あまり言わないんですよね。
練習でも、僕は気になったことがあれば止めながら進めるんですが、『こういうやり方は初めて』とみんな言います。でもそれをしないと成長はないと思うし、チャレンジしないと自分にフィードバックもないので、いろいろやっているところです」
経験豊富なベテラン、滝澤選手の存在
――若い選手が多いなか、日本でもタイでも経験豊富な滝澤邦彦選手(日本では名古屋グランパスなどでプレー)の存在は大きいのではないですか。
「そうですよね。彼に求めてるのはそこだし、本人も自覚してくれています。僕がやりたいこと、言いたいことはわかると思いますから」
――滝澤選手に関しては、丸山監督がオファーを出した形だったんでしょうか。
「最初はタキのほうから、『見てもらえませんか』と言ってきてくれました。もちろん来てくれたらうれしいけど、資金的に限られているチームなので、こっちから来てくれとは言えなかった。
条件を伝えた上で、やる気があって、『やりたいです』と言ってくれたので。もちろんフェアに見ましたが、外国人としては一番最初に決まった形でしたね」
時間をかけてタイサッカーに「日本の血」を
――最後に、「丸山ランシット」が目指すサッカーを教えてください。
「僕らの言い方だと、『トータルフットボール』。クイックリー・トランジション(素早い切り替え)という言葉も使っていますが、みんなが攻撃にも守備にも関わって、早い切り替えでハードワークする。
そのために何をするかというところで、パス、コントロール、サポートから始まり、1対1(の局面)、2対2、2対1、2対4、サイドでの2対2、真ん中での2対2と、一つずつ積み上げているところです」
――タイが強くなることが日本の成長にもつながる、ということを以前から言われています。そのためにも、大きな一歩ですね。
「そうですね。成功するか失敗するかわからないですが、僕にとってはこの上ない機会です。難しい状況ではあるけど、今までもどうにかやってきたつもりなので。
『日本の血』を上手に入れられたら、と思いますが、今までの歴史を一気に変えるのは無理。時間も必要だし、忍耐強くやらなければいけないと思っています」
(了)