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「10年前と比べてタイは大きく成長した!」JETROバンコク事務所 助川成也氏 インタビュー

製造拠点としてのタイをどう見ていますか?

やはり10年前と比べて大きく変わりました。大きなきっかけは、FTA等通商環境の大きな変化でしょう。前回の赴任時、ASEAN各国は国内産業保護のため高い関税障壁を設けていました。その後、2003年前後からASEAN自由貿易地域(AFTA)により域内関税が低減し、2010年までにはタイを含めたASEAN先行加盟国の関税がほぼゼロになりました。

これまでは、ASEAN各国市場でテレビを作って売るにしても、同じモデルであっても売る国ごとにラインを設置し国内製造しないと当該国内市場には参入出来ませんでした。

ところが、AFTAにより関税が撤廃された結果、限りある経営資源を複数拠点に分散する必要がなくなり、特定の生産拠点に資本も経営資源も集中的に投下し「強い工場」が生み出されるようになりました。その結果、拠点の統廃合が進み、ASEANの中には企業が次々と流出した国もある中で、タイは周辺国から経営資源や投資が集まり、次々と「強い工場」が生み出されるなど、存在感がますます高まっています。

これまでASEAN域内のみであった自由貿易圏は東アジア大に広がっています。現在までにASEANとして日本、中国、韓国、豪州、NZ、インドとFTAが発効しています。

その中で、タイは他のASEAN各国に比べ自動車産業を中心に裾野産業が広く、タイに来ればほとんどのものが国内で調達できるという環境に加え、東アジア全域により有利な関税で輸出出来るという通商環境を整備してきました。2015年にはカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム等タイ周辺国の後発ASEAN加盟国でも関税が撤廃されることになっています。一層、その地位は強固なものになって行くでしょう。

しかし、落とし穴もあります。ASEANは日本や中国、韓国等域外国に対しては10カ国でまとまって交渉するなど強い対外交渉力を持つ統合体です。

しかし、先日のASEAN外相会議で南シナ海問題を巡り紛糾、共同宣言が発出されない事態に陥るなど、蓋を開ければ域内関係は「脆弱」と言っても過言ではありません。且つ、ASEANは各国とも同様の産業構造を持ち、外国投資に依存する形で工業化を進めてきました。そのため、ASEAN特定国の失点・失態は自らの得点、つまり投資拡大に繋がるなど強いライバル関係にもあります。そのため、タイの政治的不安定さが再来すれば、他のASEAN各国は陰でほくそ笑むことでしょう。

タイの政治情勢のお話しが出ましたが?

前回赴任した時は、民主党のチュアン政権から愛国党のタクシン政権時代でしたが、タクシン首相は国内から絶大な支持を集めるなど、タイはASEANの中で最も政治的に安定した国と位置付けられていました。

この強いタクシン時代はいつまでも続くようにさえ思えました。21世紀になってタイでクーデターが起こるとは当時は全く思いもしませんでした。それだけに、東京で見ていた黄色陣営の空港占拠、そして赤シャツの東アジアサミット乱入等立て続けに起こる事態には本当に驚き、また隔世の感がありました。

また自身が2010年3月の再赴任直後に発生した首都中心部ラチャプラソン交差点を中心とした赤シャツデモも全く予想しませんでした。これまでのデモは、首相府や王宮周辺等商業地区やビジネス地区とは少し離れた場所で行われており、外国企業の事業運営には基本的にほぼ影響はない形でした。

しかし、ジェトロの入っているビルも含め数多くの企業が拠点を置く場所でデモが行われ、否が応でもタイの政治的不安定を肌で感じることになりました。

ここまで日系企業が集積し、サプライチェーンが構築されてしまうと、企業はなかなかそこから離れることは出来ません。企業の皆さんもどことなく不安はありますが、タイは「政経分離がなされている国」と自分を納得させながら事業を継続していることと思います。

今年から実施された最低賃金引き上げの影響はどうですか?

とても心配しています。大きな社会実験とも言えるでしょう。正直に申し上げて、想像がつきません。地方でも一律300バーツになれば、企業はあえて物流コストのかかる地方には投資をしなくなる可能性があります。

バンコク近郊にいたほうが良いと判断するかもしれません。一方、労働者は同じ賃金が約束されるのであれば地方に帰ろうということになる。

この結果、地域間で労働需給ギャップが一気に広がる懸念があり、その場合、首都近郊では雇いたくても雇えない状況は更に悪化し、地方では働きたくても職がないという現象が起こるかもしれません。

実際に、「人件費が安い」として地方で操業していた企業の中には、最低賃金300バーツを見越し周辺国への移転を前提に投資調査を進めているところもあります。また、タイに一部の比較的高い付加価値工程を残しながらもカンボジアなどに衛星工場を設置する動きがあります。同衛星工場には部品等をタイ工場から供給し労働集約的な工程を行い、出来たものをまたタイ工場に戻す手法を取っています。まさに、タイをハブとして衛星工場をスポークで継ぐ形態です。

この動きは日系だけでなくタイ企業の中にも同様の動きがあります。またその動きを、昨年のタイ中部大洪水で明らかになったタイ一極集中リスクの顕在化が後押しをしています。今まで以上にタイ一国では生産を完結できなくなっており、周辺諸国にも投資が徐々に溢れだすなど、メコン全体として生産を検討する動きが出ています。その意味で、メコン全体での投資環境整備の重要性が高まっていると思います。

ただ、カンボジアやミャンマーなど周辺諸国に十分な受け入れの環境が整っているかと言えば、そうとも言い切れません。これら周辺国のインフラは残念ながらまだ脆弱で、例えば場所によっては水を確保するにも自身で井戸を掘らなくてはならない場合もあります。そういう観点からも、最低賃金の引き上げ政策がどのように企業活動に影響を及ぼすのかまだ見えていません。

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