食品包装資材販売業として1964年に創業したホクト株式会社。68年にはポリプロピレン製きのこ栽培用ビンの製造・販売を開始。83年に「きのこ総合研究所」を設立、99年には東京証券取引所一部に上場し、以後、きのこの開発から製造、販売までを担う「きのこ総合企業」に発展した。その老舗企業がこのほどタイに初進出。きのこの可能性を伝えるとともに、新たな販路拡大を狙う。経営戦略の最前線に立つ常務取締役、森正博経営戦略本部長に話を聞いた。
「きのこ総合企業」とは、どのような企業を言うのですか?
当社は、きのこの菌の開発から生産、配送・販売に至るまで全てを一つの企業グループの中で完結しています。目的はただ一つ。最終消費者であるお客様に安心と安全をお届けするため。自分たちで生産から管理、販売まで責任を持って行うことで、初めてお客様に胸を張って自社商品をお勧めできると考えています。日本で唯一の、最高の「きのこ総合企業」でありたいと考えています。
おかげさまで日本国内は北海道から四国、九州まで「きのこセンター」と名づけた生産工場を網羅することができました。食材ですから鮮度が命。全国のお客様に安全で美味しいきのこを、一年中、欠かすことなくご提供できる生産・販売体制を完備しています。
ただ、ここにたどり着くまでの道のりは簡単ではありませんでした。最も大変だったのが、菌の開発です。私たちの本社があります長野県長野市に「きのこ総合研究所」を設置したのは1983年。研究員達は、秋のきのこのシーズンになりますと、毎日のように山に入っては野生のきのこを採取、交配を重ね、新品種の開発や新しいきのこの研究を重ねています。
ところが、新品種と言いましても、そう簡単には成果は出ません。来る日も来る日も顕微鏡を覗きながら、同じ作業の繰り返し。地道な努力を続けて初めて、お客様に自信を持ってご提供できる新種の菌を開発することができます。
野生のきのこを交配させて新種を創る。気の遠くなる作業ですね。
例えば、天然のブナシメジには独特な苦味があります。お酒のおつまみにということであれば、この苦味も良いのでしょうが、それではお酒を飲まない方やお子さんには食べられません。この苦味を取り除くことはできないか。苦味の少ないきのこの交配を繰り返し繰り返し重ねることで、ようやく現在の品種にたどり着きました。
きのこは和洋中、どんな料理にも合う万能食材です。ただ、だからと言って、きのこだけ食べるわけにもいきません。「名脇役」とでも言いましょうか。他の野菜や肉、魚と組み合わされることで、きのこの魅力も一段と引き出されます。どんな料理にも合う、オーソドックスながらも誰からも愛されるおいしいきのこを作ろう、それが私たちの動機でした。