ANNGLE公式グッズストアオープン!

「出会い」タイで見つけた相棒トンロー横丁 佐藤貴哉

仕事に没頭した一年間

「ばんからラーメン」のバンコク店をオープンさせるというのが、課せられたミッションだった。だが、簡単に請け負ってはみたものの、人の手配から店の管理、味の調整まで、自分ともう一人の日本人で全てを回さなくてはならなかった。

人を「使う」難しさを初めて知った。タイ人従業員は、採用しては辞めていくことの繰り返し。マネージャーと軋轢が生じたこともあった。当時は、自分にも原因があることに気づかなかった。言葉遣いも知らなかった。

ただ、仕事には一生懸命取り組んだ。特に赴任2年目の1年間は鬼のように没頭した。味を安定化させることだけを考えた。「いつ行っても店にいる」。人からはそう言われた。

放浪の旅へ

契約だった3年が過ぎた時、店を離れた。無性に旅がしたくなった。思い起こすと、タイにいながら店の周辺のことしか知らなかった。

手始めに、ラオスとベトナムに向かった。未知の文化や世界に接し、興味を覚えた。フィリピンに渡って英語の勉強にも取り組んだ。

放浪の旅は結局、8ヶ月にも及んだ。だが、かつての沖縄旅行とは違っていた。「タイで飲食業がしたい。自分の店が持ちたい」。自然とそう思えるようになっていた。

時間だけが経過して行った

とはいえ、事は簡単ではなかった。故郷の北海道にあるスープカレー店のフランチャイズ展開を考えたものの、北海道=海鮮のイメージが定着したタイで、カレーは受け入れられなかった。

タイに戻って間もなく深刻化した大洪水も足を引っ張った。当てにしていた資金調達の話が流れ、いたずらに時間だけが過ぎていった。

今年1月には、「高架鉄道BTSの階下に空店舗があるがやってみないか」と願ってもない話が飛び込んできたが、間もなくして紹介者がタイから姿を消すなど、これも中断を余儀なくされた。半年しか続かなかった。

相棒との出会い

タイで知り合った飲食業界の知人から鉄板焼き店の打診があったのは、それから間もなくのこと。苦労を重ねる自分を皆が気に留めてくれているのがよく分かった。

現在は、同じ敷地内で鉄板焼き店、カレー店、唐揚げ店の3店を同時展開する。だが、前代未聞ともなる取り組みに、古い客などからは心配の声が尽きない。

だが、本人は至って平然とする。「ただの飲食店の元スタッフで終わりたくない」という意地もあるが、それ以上に大きいのが、片腕となって同じ道を歩んでくれているタイ人の仕事仲間、ポップ(28)の存在だ。

どんな困難も乗り越えられる

ポップはタイの調理師学校を卒業後、ばんからラーメンに就職。二人はそこで知り合った。以来3年間、寝食を共にして苦労を積んだ。当初は仕事の「作法」などをめぐって衝突も少なくなかった。

だが、仕事に向かう真面目さには通じ合うものがあった。理解しあえるまで、そう時間はかからなかった。「貴(たか)さんとなら、何でもする」。今ではポップは、そう言ってはばからない。

日本を出て4年が経過した。念願の「自分の店」と胸を張れるまでには今しばらくかかりそうだが、かけがえのない「相棒」だけはようやく手に入れることができた。仲間であり、仕事のうえでは切磋琢磨し合うライバルとしてのポップ。この固い絆があれば、どんな困難でも乗り越えていける。そんな気がしてならない。

人口1000万人以上ともされる東南アジア屈指の巨大都市バンコク。アジア、欧州、アメリカなどからひっきりなしに航空機が就航する国際都市でもある。そこに棲むわずか4万弱の日本人。数字からすれば1%にも満たない少数派に過ぎないが、その人間模様は人の数だけ存在し、多種多様の色彩を放つ。不定期新企画「Human Story バンコク人間模様」ではバンコクに生きる個人にスポットを当て、そのドラマ=人間模様を一話完結で紹介する。

ANNGLE STORE
タイでウケるTシャツ
タイ語Tシャツ(パクチーなしで)
¥ 2,580