「タイのみなさん、東日本大震災、九州北部の豪雨災害では温かい援助をいただき、ありがとうございましたぁ!」
8月下旬、タイ・バンコクの新商業施設「GateWay Ekkamai」に置かれた特設ステージ。千葉県産のナシやサツマイモなどのトップセールスのためタイを訪れていた森田健作知事のボルテージは、すでに頂点に達していた。
俳優、芸能人としても著名な森田知事。タイでもファンは多く、会場から歌のリクエストが挙がると、気を良くしたのか急きょアカペラで自慢の喉を披露。会場は大いに沸いた。こうした席で飛び出したのが次の一言だった。
「私はですね、これだけタイの方々が良くしてくださっている。ですから、タイの方々については日本側もビザの免除を検討しなければいけないと思うのです!」
この「ニュース」をまず伝えたのが、タイの民間テレビ局「チャンネル7」だった。
報道には少し脚色が加わり、「日本政府が外国人、特にタイ人に対し、ビザ免除を検討していることを、森田知事が明らかにした」という内容に微妙に変化。
これを主要テレビの報道として伝えたのが、9月4日午前10時配信のanngle thの記事だった。
ここから予想を超えた展開が始まった。
タイの三大インターネットサイト(掲示板)の一つ「パンティップ・ドットコム」に、anngle thへのリンクが貼付されたのが午前11時すぎ。anngleのfacebookファンページにも閲覧が殺到し、シェア数はこの日だけで100前後にも上った。
anngleのサイトを管理するサーバーへの瞬間アクセス数も上昇し、最大時130にも。通常は、あっても50程度というから倍以上という異常事態だった。
このため、サーバーがダウン。一時的につながりにくくなったほか、編集作業のため同サーバーにアクセスしていた海外滞在中のanngelスタッフの作業までもがストップした。
結局、この状態は同日午後5時すぎまで続いた。anngle thの記事に対する「いいね!」はこの日だけで1900以上(現在の累積数は約2800)。ページビューも累積で約43000に達している。
領土問題もなく、ヒトとモノとの交流が盛んで良好な日タイ関係。ビザ免除をめぐっては、両国を行き来するタイ人、日本人の中からも求める声が強かった。
そうした矢先の森田知事の発言。感極まってという事情もあるだろうが、反応もひときわ大きく、それだけ日タイ関係に対する人々の関心が高いことを浮き彫りにした。