昨年暮れの大洪水で壊滅的な被害を受けたタイ中部の工業団地。あれから半年。浸水した各地の工業団地では防水工事などが次々と始まり、対策が遅れていたアユタヤ県ハイテック工業団地でも堤防を強化する工事計画が、このほどようやく着工を見た。間もなく雨期。防水対策の進む主な被災工業団地の現況をまとめた。
ハイテック工業団地は敷地面積380ha。ここに8月末までの工程で高さ3メートル強、全長11キロにわたる堤防を建設する。昨年の洪水では2メートルを超える濁流が敷地内に流れ込んだ。日系企業のHOYA、味の素などが入居、早期の防水対策が求められていた。
一方、同じアユタヤ県あるロジャナ工業団地。敷地面積1,452haと最大規模を誇り、ホンダやミネベア、日本ハム、パイオニアなど多くの日系企業が軒を並べる。すでに防水工事が始まっており、全長約78キロにわたって堤防を強化。最大4メートルまでの浸水に備える。地下部分も掘り下げ、排水を促す計画。同様に8月末までの完成を目指す。
アユタヤとバンコクの間に位置するパトゥムタニ県のナワナコン工業団地。こちらでも現在、8月末の完成に向け堤防の強化工事が急ピッチで進行中。全長18キロにわたって高さ3.5メートルまで堤防を底上げする。同工業団地には日本電産、ロームなどが入居。
同じパトゥムタニ県のバンカディー工業団地でも、全長10キロにわたって堤防を高さ4メートル近くまで強化する工事が進められている。
被災への懸念がなお残っているのがアユタヤ県北部にあるサハラタナナコン工業団地。運営会社が昨年、経営破綻。思うように防水対策が進んでいない。タイ政府は入居する民間企業から堤防強化工事費を借り入れ工事に着手する意向だが、法的な処理が伴うことから本格的な雨期が始まるまで時間との睨み合いが続きそうだ。堤防の全長は13キロ、工業バルブのヨシタケなどが入居する。
(以下は、排水後、約1ヶ月が経過した時点での今年1月のロジャナ工業団地の様子)