アメリカのオートバイメーカーとして有名なHarley-Davidson(ハーレーダビッドソン)が、タイ東部ラヨーン県の工業団地に工場の建設を計画していることが分かった。アメリカから輸入した部品の組み立て工場で、2018年後半の操業開始を予定している。
現在、ハーレーダビッドソンはアメリカ国内に3工場と、インドとブラジルに部品の組み立て工場がある。
タイでの工場建設を計画する理由
タイに工場を建設する理由としてまず挙げられているのが、アジア・太平洋地域で新たなターゲット層を開拓し、市場を拡大させることである。
第二の理由としては、税負担を減らすことである。現在タイでは、海外からのバイクの輸入に際しては60%の税金が課せられているが、タイ国内で組み立てを行うことで税負担が減り、またアジア域内への輸出を行う際にも、タイの工場が輸出センターとなることで税金面での優遇を受けられる。
また、アジア地域への輸送にかかる日数も、例えば中国の場合、従来の45~60日から5~7日となり、短縮が可能となる。
加えて、今回タイでの投資に転換した理由として、トランプ大統領がTPPからの離脱を行ったことが挙げられる。それ迄は、TPPを活用してベトナムやマレーシアなどのアジア市場で免税で販売を行うことを想定していたが、離脱によりそれが叶わなくなった。
労働組合からの批判と会社の方針
タイでの工場建設計画発表に対し、アメリカの労働組合側が「”アメリカらしさ”というシンボルにまでなったバイクブランドを創り上げてきたアメリカ人を失業させようとしている」「アメリカ人労働者や、全米で何十万人といるハーレーダビッドソン愛好者を面と向かって侮辱しているようなもの」と、会社を非難する声明を出している。
トランプ大統領も「アメリカに工場を建設し、アメリカ人を雇う」政策を打ち出しているが、会社側としては、タイでの工場建設はアメリカからの業務のシフトではなく、経済成長が続くアジアでの成長を意図したビジネス上の戦略であり、アジア市場での成長が、アメリカ側の部品事業の成長にも繋がるとの認識を示している。
尚、昨年のハーレーダビッドソンの海外での売上高は2.3%の増加であった一方、アメリカ国内での売上は3.9%の下落と、対照的な結果となっている。