選手のみならずコーチ、スタッフらに複数の日本人を配し、“日本流”でチーム強化を図るサッカー・タイリーグの名門・チョンブリーFC。昨年、「六人の侍」として連載で紹介したが、今季はさらに監督、選手と計三人のサムライが加わった。
最後に登場するのは、和田昌裕監督。タイ・プレミアリーグ(1部リーグ)では初の日本人監督となった和田監督のインタビューをお届けする。
タイに欠けている「切り替え」と「守備意識」
――サッカーの面では、どういったことをテーマにしていますか。
「毎日言っているのは、『切り替え』です。サッカーは攻撃があって守備があるので、その移り変わりのところ。そこの切り替えのところをとにかく早くやれと、ずっと言い続けています。
それがいかに大事かということを練習のなかでも常に言っているので、少しずつ変わってきているとは思います」
――その点がタイサッカーに欠けているところでしょうか。
「だと思いますね。あとは、攻撃の選手が守備を助けるとか、そういう意識が全くないんだと思います。
タイの選手は攻撃は好きなのでどんどん上がっていくんですが、そのまま帰ってこない。守備を助けるという意識が全然感じられなかったので、そこも意識付けを頑張っているところです」
未経験のタイの「暑さ」
――チョンブリーFCでは、どんなサッカーを目指しますか。
「とにかく攻撃はスピード感のあるサッカーにしたい。基本的には切り替えさえ速い習慣がつけば、攻守にスピーディーなサッカーができるという思いがあります」
――基本的には、Jリーグ時代と変わらないサッカーを?
「いや、神戸の時よりは正直、リーグ内でのレベルが高いですからもうちょっと慌てないサッカーが出来そうな気はします。
それから、僕が経験していないのが、一年通して暑いということですよね。日本は四季があるので、本当に暑いのは7月、8月だけ。
タイは一年を通じて暑いですから、常に速さを要求しても逆に質が落ちてしまうかもしれない。そのへんは、選手のコンディションを見ながらいろいろ要求していきたいと思っています」
日本人がアジアで監督をする意義
――今季、タイリーグでは日本人監督が4名。日本人がアジアで監督をするというのはどんな意義があると思いますか。
「Jリーグが始まって21年、飛躍的に成果が出てきています。多くの日本人選手がヨーロッパへ出て、活躍できるような国になってきている。
今度は指導者が結果を出すことで、ますます日本サッカーが世界で認められるきっかけになると思います。
そういう意味ではすごく大事な役割を担っている気はします。でも、そんなことは考えずに、自分らしくできればと」
――日本のサッカーがリスペクトされているというのは感じますか。
「日本人はきっちりしているとか、真面目というふうには見てくれていると思います。でも、一番は結果ですよね。結果が出れば、タイ人ももっと認めてくれると思うので。
上位のクラブですから一つはタイトルを取れるように、一試合一試合選手が全力で戦えるような雰囲気を作っていけたらと思います」
(了)