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日本人ミュージシャン・HIROOがタイの3年間で創った音楽の世界【下巻】

HIROO a.k.a. HALATION

新天地”GLOW”、改名”GIANT SWING”

せっかくレギュラーをつかんだというのに、店の経営不振で再び活躍の場を失うことになったHIROO。ところが、パートナーのDJ mAsaがちょっとしたきっかけからバンコク中心部スクンビット地区にある老舗のクラブ「GLOW」でのイベント話を持ち込んできた。願ってもない再チャンス。HIROOはここでイベント名を「GIANT SWINING」から「GIANT SWING」に改名、一から組み立てなおすことになった。

「GLOW」があるスクンビット地区は、タイ人だけではなく日本人も含め様々な国籍の外国人が集うバンコクのど真ん中。HIROOを中心としたメンバーらは、引き続きタイ内外のアーティストとのコラボレーションも積極的に展開。気づけばタイDJ界のドン”DJ DRAGON”や、タイ伝統音楽の継承者とも言われる”MAFT SAI”もが彼の活動に興味を示し、お客が確実に集まる内容の濃いイベントを次々と展開していった。

イベントが本格的に軌道のった2011年の後半からは音響面を強化、イベントのオフィシャルスポンサーとして、ファッションブランドのTRAPSもイベントをサポートすることになった。

北国の音楽と南国の音楽

HIROOがGIANT SWINGで用いられる音楽は様々な種類があるが、とりわけ「テックハウス」、「ディープハウス」と呼ばれる4ビートが主体の音楽が多かった。人が演奏した生音と、近代的な電子音楽をミックスしたこの新しいジャンルの音楽は90年代半ば、シカゴやフランスで始まった「ハウス」と言われる音楽が軸になっている。

俗に言う「四つ打ち」といわれるこの音楽はポップスなどの流行曲に比べ、1曲がかなり長いのが特徴で、6分、7分はざら。メインの小節を迎えるまでに3、4分かかることも珍しくない。DJとしてこのような音楽の演奏は、「流行りの曲をどう組み合わせるか」ということではなく、グルーヴとわれる「心地良いノリをどう構成するか」が演奏する上で重要なポイントだったりする。

HIROOはこうした「溜める」音楽が人々の心を深くとらえているようにみえた。一日中降り続く雪。人々は暖房の入った屋内で春が来るのをじっと待ち、耐える。こうしたことから、音楽そのものに連続性とドラマを感じやすい。北国の独特の要素がそこにある。

然しながら、タイの人はこのような曲の構成には、やはりまだまだ馴染みがないように思えた。サビがなかなか回ってこない曲、直感的にわかりやすいメロディーが存在しない音楽には、違和感を感じ、しびれを切らすこともある。畢竟、タイの現在のリスナー層の思考としては、覚えやすく、口ずさむことが容易な欧米のポップスなどが好まれる傾向が極力強い。

パーティー上がりの真夜中、HIROOとハーゲンダッツを片手に話した。「タイでは寒い国の音楽は届かないのだろうか--」

彼のその言葉が印象深かった。

音楽とは本来、人間が組織づけた単なる音の集合に過ぎない。音のもつ様々な性質を利用し時間軸を組み合わせて感情や思想を表現していく。個人の受け止め方は実に多種多彩で、その日の体調や外気などの要素によっても変化するアメーバ的な存在。

北海道で伝わり、タイで伝わらないもの。音楽に国境は存在しないとされながらも、HIROOは自らの音楽観点をどう伝えればよいかを、改めて考えながら着実にイベントをこなしていった。

ネットで繋がり広がっていったアーティストの輪

DJ兼イベントオーガナイザーであるHIROOは、自らのイベントにタイ国外のアーティストを積極的に迎え入れているのも特徴だった。ゲストアーティストとはインターネットでコンタクトを取り、次々とイベントの機会を作っていった。ただし、無意味なコラボレーションはしない。双方の音楽にとって意味のあるもの、双方がともに音楽のカタチを表現できると踏んだ時に出演を依頼している。出演が間に合わなければ相方のDJ mAsaと二人で進めるだけ。

この結果、参加するゲストアーティストの意識もだんだんと向上。今ではトップレベルのゲストアーティストによる技術の高い演奏を楽しむことができるようになった。アジア、ヨーロッパ問わず、流行りのダブステップミュージックからドラムンベース、時には沖縄民謡もイベントに取り入れた。変幻自在、楽しみの潰えない音楽イベントに今では多国籍な多くの音楽ファンが足を運ぶようになった。

タイ音楽活動3年。

HIROOは今やバンコク市内のどこの音楽パーティーにも引きを取らない音楽の渦。「バンコクで内容の濃い音楽イベント」を作り上げた。「これからさらに大きくなると期待していたのに」。彼の今回の日本帰国を残念に思う観客・多国籍なファンは少なくない、だが、彼が育んできた音楽は着実にタイの大地に根付いている。

タイで音楽の世界を作り上げた日本人ミュージシャンHIROO。帰国後の活動にもまだまだ目が離せない。

そして、来る4月26,28。帰国前最後となる二大イベントが決定!
ゲストはHIROOと音楽的共感度が100%ともいえる、北の同士”Naohito Uchiyama”。HIROOと同じ故郷北海道にて独創性の高い音源を数々リリースし、演奏技術、ミックスセンスもさる事ながらシンセサイザーを使ったライブショーケースには世界的にも定評があるアーティスト。まさにHIROOのバンコク音楽活動の最後を飾るのに相応しきミュージシャン。
詳細は近日公開のHIROOのラストコラムにて。

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