タイには、欧米や日本のような立派なクラブミュージックのシーンが存在しないと思っている人は多いかもしれない。実際にそういった声も聞いたことがある。だが、本当にそうなのだろうか?
たしかに最先端をいってる都市には及ばないのかもしれないけど、少なくともそれらの国の地方以上の規模と質は備わっているように感じる。なにより、タイの人たちは明るくお祭り好きなので、様々なタイプの音楽がエンターテインメントとして成立する土壌は常にある。「クラブ」と限定せずに、夜遅くに人々が踊っている場所がどれだけあるか考えてみると、バンコクに匹敵する都市はほとんどないだろう。
さらにアンダーグラウンドなカルチャーに積極的にアプローチしてみると、ここでしか起こっていない面白い現象や、世界中に影響力を持つほどの未来の可能性を発見することができる。
タイのクラブカルチャー/DJカルチャーを長きにわたって支え続けた人物として真っ先に名前が挙がるのは、DJ DRAGONをおいて他にないのかもしれない。それほど彼のキャリアには説得力があり、扱ってきた音楽も幅広い。ヒップホップ、ドラムンベース、ダブステップ・・・現在ではそれらの影響を上手く取り入れた折衷的なハウスミュージックを主にプレイする。
DJ DRAGONを特徴付けるのは、タイの地域性ではなく、世界中のシーンをリアルタイムで把握する音楽的な嗅覚だ。アナログでのDJにこだわる彼は、常に最新のレコードをヨーロッパから仕入れている。ほんの少し前の曲を「オールドスクール(古くさい)すぎるんだよね」とプレイリストに入れないことも。ひとつのジャンルに愛情を注ぐ傾向の強い日本のDJからしたらおかしく感じるのかもしれないが、そこがある種の信頼に繋がっていたりもするのだ。DJ DRAGONをアジアの中心人物として頼ってやって来る海外のDJ/アーティストは多い。
日本の音楽と文化を愛するDJ DRAGONは、以前よりGOTH-TRADやDJ YASといったアーティストとの交流を深めていたが、2012年には日本のクラブミュージックの大物中の大物、DJ KRUSHをバンコクに呼んでいる。なにか日本人にたいして精神的な深い繋がりを感じている様子がある。現在、北海道の函館で活動するHIROO(筆者)を自身のイベント「DUBWAY SESSIONS」のメンバーに加えていたことも。
東京や大阪でのDJはこれまでにもやってきたDJ DRAGONだが、12月20日(土)には函館のイベント「HALATION9」にゲストとして登場。北海道で、しかも函館という小さな街をツアーの中心に選ぶのは異例のことだろう。
手前味噌だが、このHALATIONというイベントでは、世界中のアーティストを参加させながら、距離やタイムラグにとらわれずに今の時代のベストなものを見せ続けていきたい。時間は必要かもしれないが、日本の一地方の枠を越えて、アジアのイベントとしての存在感を外に向けて示したいと思う。翌週はDJ DRAGONは東京でのイベントに出演。この機会をお見逃しなく!
イベントフライヤー「HALATION9」2014年12月20日(土)
「HALATION9」
会場:Stone Love(北海道・函館)
22時開始
共演:RYOHEY、SHORT-ARROW、HIROO、arakura、SUKESAN、KIMIHEN
お問い合わせ:halationhakodate@gmail.com「HALATION」Facebookページ
www.facebook.com/HalationHakodateHokkaido
2014年12月26日(金)
「Sound Slugger」
会場:UNIT、Saloon、Unice(東京・代官山)
23時開始
共演:MAD PROFESSOR、PART2STYLE SOUND、1945 a.k.a KURANAKA など
お問い合わせ:03-5459-8630(UNIT)