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日本からタイのチュラロンコーン大学に短期留学した私の「カタツムリ研修記」(続)-山岸由季

本続編では、今回の留学の意義について考えてみたいと思う。私が考える今回の留学の意義とは、海外で活躍する人々のもとで学問、また異文化を体験し、新たな価値を見出すところにあると思っている。加え、多様な生物資源を持つタイをフィールドに卒業研究の材料であるカタツムリを採集することもその一つであった。

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この短期留学を終えて、彼らの専門領域である分類学に私自身、とても強い関心を持ち、またその奥の深さを知った。すでに書いたように生物は、分類群ごとに形態、構造(外部・内部)に決定的な特徴があり、それらを用いて分類されるのだが、実際にサンプリングや講義を通して、種間で形態、構造の違い、及びそれぞれの分布や分化の差異などを学べたことは、とても貴重な経験となった。

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また、タイの学生の研究、勉強に対する姿勢は、私にとって、とても刺激的で、たとえ専門分野と関係がなくとも興味があれば調べ、参考資料を読みあさる。一見、当たり前のようなことに思えるかもしれないが、〝分からないこと知ろうとする意欲〟、これこそが、学ぶということの原点であって、本当の学ぶということなのだと強く思う一瞬であった。そのため、周りの学生から受ける影響は大きかった。

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その他にも、滞在中に彼らとの考え方、または価値観の違いを感じると共に、ある事柄に対し小さな分野だけに注目しこだわっていた自分に気づくがされる留学となった。この経験を通し、私自身もある事柄に対し自身で勝手に線引きをするのではなく、広い視野で何事に関しても興味を持ち、多くのことを吸収していきたいと思う。

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異文化という点においても、短期間ではあったが、タイの文化や伝統的な習慣、またその中に根付いている人々の価値観を肌で感じることができた。この留学で、ただ異文化の差を単なる知識をではなく個人の経験として実感できたことは、いろいろな価値観や視野を持って物事を捉えることに繋がったのではないかと思う。また、日本人として自身を見つめ直す良い機会となり、多文化理解という点でもとても意味のあるものになったと思う。


【チュラロンコーンでの大学生活】

いくらかの講義、セミナーなどの参加を通して、Chulalongkorn universityの教育レベルの高さ、学生の勉強に対する意識の高さを改めて実感した。特に、PHDセミナーでは、理学部全体のPHD学生が週替わりに自身の研究発表をするのだが、発表及びセミナー間はすべて英語、そしてプレゼンテーション完成度の高さ(構成、展開、内容など)には、とても圧倒された。ディスカッションタイムにおいても、学生の積極的な質疑やそれに対する適切な応答など、見習いたい点ばかりであり、今後の私の人生においてもこの経験を活かして行きたいと思う。

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また、解剖実習を通して、カタツムリの内部構造を理解し、特に系統分類の際に用いられる生殖器構造を重点的に学習した。カタツムリは、雌雄同体の生物であるため、雄と雌の両方の臓器を兼ね揃えている。そのため分類する際には、この生殖器構造の違い(例えば、familyによって臓器の配置、形、大きさなどが異なる)を用いて識別する。スケッチでは、各パーツの接続部やその状態をより正確に描くことが求められ、これを通して特に重要な臓器部分がどこなのか、及び、分類の際にどのように用いられるのかを学ぶことができた。

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カタツムリのみに関わらず、PHDの学生から、その他の生物(ムカデ、ミミズ、ヒル)の内部構造また外部形態の違いなど分類に必要な基礎知識の指導も受け、新しい知識を習得すると共に、分類学の面白み、興味深さを強く感じた。

特にミミズの生殖器の構造は、各familyでmale poleの数が異なるためので、サンプリング中であっても外部形態だけで識別ができ、とても興味深いものであった。また、個々の生物だけでなく「malacology」では、軟体動物の各classの特徴や進化の歴史など講義を通して学んだ。

文・写真提供:山岸由季(やまぎし・ゆき) チュラロンコーン大学理学部と信州大学理学部の学部間協力協定により、2012年10月1日から12月1日までチュラロンコーン大学に短期留学。Malacology(軟体動物学)と英語を履修した。2013年3月、信州大学を卒業し、日本の民間企業に就職。

日本の大学や学部が海を超えて外国の大学などと行っている知的・人的交流が「交換留学制度」。1年を超える長期のものから数ヶ月という短期までさまざまで、これまでに数多くの研究成果を挙げて来た。タイの最難関チュラロンコーン大学でも日本のいくつかの大学(学部)と協定を結び、日本人の学生を積極的に受け入れている。その中の一人、国立信州大学理学部から昨年派遣され、このほど大学を卒業した元交換留学生が、anngleのために手記を寄せてくれた。短期集中連載で一挙公開した。

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