私もそんな彼らと共に行動していたせいか、サンプルの最終日に近づくに連れて、次第に彼らの色に染まっていった。
気づいたら、ミミズやムカデがなぜだかすごく可愛く見えてきて、よく「私ヤバッ!これ普通の女子大生からかなりかけ離れてるじゃん!こんなことやってる大学生はどこ探してもいないでしょ」というように自分自身に驚いていたのを覚えている。でも、なんだかそれがとても面白おかしく感じると同時に、人とは違った経験をしている自分がなんだかすごく誇らしく思えた。
私の所属していたタイの研究室は分類学が専門だったので、サンプリング中に見つけた生物を持って研究生に尋ねると、どの種なのかすぐに教えてくれた。そのため、サンプリング中、見つけた生物を彼らに見せたとき、これは新種かもしれないと言われた時はとても興奮し、またすごく嬉しかった。
初め、彼らがムカデ、ミミズなどを見つけて喜んでいたのが全く理解できなかったけれど、こんなにも生き物を見つけることが楽しいものかと非常に思った。短い期間であったけれど、彼らの生き物を見つけることに対する情熱を理解できた気がする。
サンプリングは、まるで土の中の宝物を探しているようで本当に楽しかった。ある時には、土を掘っていたときに、急にブヨっとした塊が出てきて何かと思ってじぃーーっと見ていると、急にタイの学生がそれを掴んで私に投げつけ、私はおもわずキャッチ。触り心地はすごくぶよぶよしていて気持ち悪く、思わずまた何を掴んだのかと思い、ぎゃあああああああって再び私は叫ぶ。そしてタイの学生がまた笑う。
よくよくその物体を見てみると、すごくブッサイクなカエルで、思わず大笑いした。そんなこんなで、タイでのサンプリングでは、毎度毎度叫びまわり、そして逃げ回り、とにかくみんなで笑った。また、このサンプリングを通して、教科書では学べない生き物の生きた姿というものを学ぶことができ、とても貴重な経験となった。(研修記完、続く)
【フィールドワーク】
研修期間の1ヶ月間は、ほとんどをサンプリングに費やした。今回が、海外フィールドでのサンプリングが初めてというわけではなかったが、タイ全域に渡ったサンプリング活動を通して、日本では触れることのできない熱帯の生物を間近に観察でき、実際にカタツムリを捕食するアトポスやカタツムリ、ムカデのクラッチなどを確認することができた。
またその他にも、生物の共存の様子、地域ごとにおける自然環境の違いなど文献だけでは得られない生の情報を収集することができ、その上、多くの生物多様性を観察することができた。
特に、私が配属したタイの研究室ではムカデ、ミミズ、ヒル、カタツムリを研究材料とし、集中的にそれらの系統分類に取り組んでいるため、サンプリング活動を通して、彼らからどのように自然界にいる生物を見つけ出し、採集するのか、また採集した個体の保存方法、外部形態からの種の特定方法など、分類に必要な手法なども学ぶことができた。
フィールドワーク全体を通し、実際のフィールドイメージを得るとともに、分類に必要な基礎知識の習得ができた。
文・写真提供:山岸由季(やまぎし・ゆき) チュラロンコーン大学理学部と信州大学理学部の学部間協力協定により、2012年10月1日から12月1日までチュラロンコーン大学に短期留学。Malacology(軟体動物学)と英語を履修した。2013年3月、信州大学を卒業し、日本の民間企業に就職。
日本の大学や学部が海を超えて外国の大学などと行っている知的・人的交流が「交換留学制度」。1年を超える長期のものから数ヶ月という短期までさまざまで、これまでに数多くの研究成果を挙げて来た。タイの最難関チュラロンコーン大学でも日本のいくつかの大学(学部)と協定を結び、日本人の学生を積極的に受け入れている。その中の一人、国立信州大学理学部から昨年派遣され、このほど大学を卒業した元交換留学生が、anngleのために手記を寄せてくれた。短期集中連載で一挙公開!