短期連載シリーズ「タイの病気」もそろそろ後半戦。デング熱、マラリア、狂犬病、ウイルス性肝炎と続いた今回は、その他の感染症を一挙紹介!(主なものは解説も)
日本でも馴染みのある「インフルエンザ」
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型がある。このうちB型とC型は、遺伝子が安定的か、ほとんど変化することがないため、子供のころなどに一度かかってしまえば免疫がつき、これが一生続く。
問題なのは変異の多いA型。「旧ソ連型」とか「香港型」という名称をご記憶の人も多いことだろう。これらは全てA型。A型は8つある遺伝子情報のうちHAとNAと呼ばれるものについて変異が大きく、遺伝子情報が異なればワクチンなども効き目がない。これまでにHAで16種類、NAで9種類が確認されている。
これらの変異を記号化して表したのが、「Aソ連型」として知られるH1N1、「A香港型」として知られるH3N2、H1N2、H2N2など。近年、「トリインフルエンザ」として有名になったウイルスはH5N1と表記される。
インフルエンザは通常の風邪と異なり、急速に症状が出るのが特徴で、悪寒や発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛などに見舞われたら、早期に医師の診断を受けたほうがいい。咽頭の痛みや咳、腹痛、嘔吐、下痢といった症状を伴うこともある。体力の弱い老人や子供は肺炎やインフルエンザ脳症などの合併症を発症することもあるので注意が必要だ。
かつては「風土病」とされたツツガムシ病
ツツガムシ病はダニの一種ツツガムシによって媒介される。汚染地域の草むらなどで有毒ダニの幼虫に吸着され感染する。発生はダニの幼虫の活動時期と密接に関係するため季節により違いがある。日本では、かつて東北地方などの「風土病」とされたが、戦後、全国に広がるようになった。
潜伏期は5~14日。39℃以上の高熱を発するのが特徴で、皮膚には特徴的なダニの刺し口が現れる。発疹、倦怠感、頭痛が主な症状。汚染地域では、肌の露出を少なくするなどの対策が必要。タイ国内でも年間で7000件を超える発症例が報告され、死者も出ている。
熱帯に位置する南国タイ。穏やかな気候ながら、旅行者にとっても滞在者にとってもちょっぴり心配なのが、病気に罹った時の対応。海外旅行者保険や医療保険など万が一時の対策は万全に採っていても、どんな病気が多いのか、どんな症状に見舞われるのかまでは意外と知らない。そこで現地の病院に取材してまとめてみたのが本稿。名付けて「タイの病気」。短期連載で一挙ご紹介!