タイのパタヤビーチ。バンコクから一番近いビーチリゾートの変貌が凄まじい。
毎週末、バンコクとパタヤをつなぐ高速道路は、大都会バンコクの喧騒から逃れて週末をビーチでのんびり過ごそうというバンコクの富裕層たちの高級車と、今や世界の経済大国となったロシアや中国からの観光客をのせた観光バスが行きかっている。
バンコクから車で90分。スワンナプーム国際空港(新バンコク国際空港)からは60分というアクセスの良さも、プーケット島やサムイ島を代表する他のビーチリゾートに負けない魅力となっている。
タイの中流層以上をターゲットに建設されている高級感漂うリゾートホテルやコンドミニアム、高級デパートメントストアも以前はパタヤビーチを避けていた若いタイ人カップルやタイ人ファミリー層を引きつけている。
しかし以前のパタヤビーチといえば、夜の風俗産業やドラッグが蔓延する危険地帯、汚染された汚い海、観光客を騙す詐欺師など、タイの3Kビーチと呼ばれるような場所であった。元々小さな漁村に過ぎなかったエリアを、ベトナム戦争後のアメリカ軍が軍人の保養地として利用し始めたという歴史的背景があるパタヤ。かつてアメリカで世界大恐慌の後にフーバーダムの建設が始まり、その建設作業者たちの娯楽のためにラスベガスのギャンブルと風俗産業が発展した背景とどこか似ている。
最近のパタヤビーチは、そうした過去の悪いイメージを消し去るような勢いで変貌を遂げている。パタヤの変革を先導しているのが過去4年間パタヤの指揮をとってきた市長のイティポン・クンプルーム氏である。
クンプルーム市長は過去4年間で、パタヤの大変貌に貢献する13の戦略、1000を超えるプロジェクトの立ち上げを実行してきた。その中でも1番に優先されてきたのがタイ人、外国人居住者および観光客の安全である。
タイの観光業専門のコンサルティングファームによると、パタヤを訪れる観光客は年々増加の一途。タイ国内の政情不安と欧州の金融危機に見舞われた2010年は前年比100%増。大洪水が襲った2011年も、避難先として多くの人々がパタヤを訪れた。今年、パタヤのホテルは過去最高の8百万人を受け入れることになる見通し。
パタヤビーチの更なる発展の鍵になるのはインフラストラクチャーの整備だろう。
国内経済が好調のタイ。バンコクからパタヤまでの高速道路の整備も整いつつある。そしてヒルトンホテルやセントラルデパートメントストアを代表する超一流ホテルやショッピングセンターの更なる開発が多くのタイ人観光客を引き寄せることになるだろう。
2013年には世界初のアニメをテーマにしたウォーターパークCartoon Network Amazonの開業も控えている。パタヤ市長が目指すのは大人から子どもまでが楽しめる街を作ることだ。
アメリカのラスベガスがギャンブルの街から、男性も女性も大人から子どもまでが楽しめるエンターテイメントの街に生まれ変わり、経済発展した例と、やはりどこか似ている。
メタモルフォーゼ(変身)。青虫が美しい蝶に変身するように、パタヤビーチも今、夜の街という姿から、大人も子どもも楽しめるエンターテインメントの街に変身する途上にある。