ラオス第2の都市・チャンパーサック県パクセー郡。旅の終わりに、当地にある最大の市場「タラート・ダオファン」を訪ねた。
メイン通りから正面の門をくぐると、まず眼前に広がるのが、どこにでもありそうな貴金属売り場。華僑資本らしい金色と赤色の装飾看板の下でラオス人の売り子が、いつ来るかも分からない観光客を静かに待っていた。「一体、誰が買うのだろう」というのが率直な印象。
その奥、路地を進んだ突き当たりに生鮮食料品の売り場はあった。まず目についたのが、コンクリートの三和土(たたき)に並べられた鮮魚の数々。すべてメコン川で水揚げされたものだという。幼い子どもたちも手伝いに専念。
見たこともない魚形。おちょぼ口なのに胴体はでかく、図鑑で見た深海魚にも似た姿。アンコウのように横広で、松本清張に見間違えようかという膨れ上がった唇。夥しいハエが群がる中、魚は仲買人らによって、次々とさばかれていった。傍らでは、手製の塩からも売られていた(ピンク色や緑色のバケツ)。
鮮魚売り場のすぐ隣には、色とりどりの青果物。青菜、ニンジン、玉ネギ、ブロッコリー、白菜、唐辛子…。市場規模では遠く及ばないが、タイ最大の生鮮市場「タラート・タイ」にも負けない華やかな色彩を放っていた。
ここでも生姜やニンニクといった香味野菜が重要な食材の一つに。ネットや段ボール箱に詰められたキロ単位で販売されていた。正午近くになると、店じまいを始める売り場も出てくる。
かつてあったチャンパーサック王国をめぐる旅も今回が最後。現在の南ラオス・チャンパーサック県には、豊かで険しい自然と、変わることのない人々の暮らしがあった。
※次回は、新南ラオス紀行【番外編】をお届けします。