「カオヤイ産ワインのクオリティーは数年前に比べて格段に上がっています。ワイナリーによって差もありますが、一括りにタイ産ワインなどと論評することは最早、適切ではなくなっています」
連載企画「New Latitude Wine (新緯度帯ワイン)の魅力」でお馴染みのソムリエ、原宏治(Koji Hara)氏はこう語って、タイ産ワインの品質向上を指摘する。
今回、原氏とともに取材に訪れたワイナリー「GranMonte(グランモンテ)」でも、つい2年前ほどまではブドウ品種の安定的な収量の確保に力点が置かれ、醸造はもっぱら外部委託だった。
転機となったのは既報のとおり、オーナーの娘ニッキー(Nikki)さんの帰国。豪州アデレード大学で学んだ栽培技術を活かし、場内全域に給水用のスプリンクラーを設置。考え抜かれた水分管理と、こまめな剪定作業を続けることで上質な果実を得ることが可能となった。
また、敷地内に醸造用の工場を新設して外部委託生産を廃止。栽培から醸造、出荷に至るまで一連の管理の下、ワイン生産に取り組むことができるようになった。
訪問客用にゲストハウスも建設。2階建ての南欧風の建物からはブドウ畑が一望でき、カオヤイの山々から覗く朝日が一日の始まりを告げてくれる。ちょっとしたバカンス気分を味わうには十分すぎるほどだ。
正面玄関付近には土産物を陳列した売店も。ここでオーナーのウィスットさんお勧めのワインが試飲できる。濃厚で深みのある赤ワインに、キリリとしたアクセントの効いた白ワイン。甲乙つけがたい逸品が揃っている。
右から順にソムリエの原宏治氏と同、田中博氏、オーナーのウィスット氏GranMonte(グランモンテ)
オーナーのウィスット氏が創業したタイ東北部ナコーンラチャシマ県にあるワイナリー。15年ほど前からブドウ栽培を始めたが、ワインの醸造は従来は委託生産が中心だった。豪州アデレード大学醸造学部にワイン留学した実娘ニッキーさんが帰国して以降は、敷地内にある自社工場でワインの醸造を開始。2011年には海外で43もの賞を受賞するなど、世界に「タイ産ワインあり」の名を轟かし、話題となっている。人気急上昇中の同ワイナリーを7月上旬に訪ねた。