ラーメンといえば、あっさり醤油味のスープがデフォ。っていうか、子供の頃の記憶にあるラーメンはこれしかないからしょうがない。小学生の時にどさんこラーメンって店が家の近くに登場して味噌ラーメンを初めて食べたり、大学生になって入ったふくちゃんって店でとんこつラーメンってものに出会ったりしたが、自分的にラーメンといえば鶏ガラ醤油ベースの「東京ラーメン」が基本の基本。
でも、80年代半ばの東京でのとんこつラーメンブーム以来、コッテリ系のラーメンが普通に食べられるようになり、いろんな店に通うようになった。なんでんかんでん、ホープ軒、丸金、天鳳、麻布ラーメン、土佐っ子そして天下一品とコッテリ系のマイブーム。
でもって、2012年のタイ王国ラーメン市場の状況というと。1992年進出し、タイの外食チェーンのビッグネームにのし上がった8番ラーメンに続いて続々と日本発のラーメンチェーンが上陸。味千(2002年)、山小屋ラーメン(2006年)、桂花(2008年)、ばんから(2008年)、ちゃぶとん(2010年)、丸玉(2011年)、むつみ屋(2011年)と、いずれもコッテリ系のスープが特徴のお店が続いた。
茶々
バンコクのコッテリ系ラーメンの中でもダントツにコテコテしてるお店。麺はやや太めで、トッピングはチャーシュー、ゆで玉子、ネギ、ノリ、ゴマ。スープの粘度は凄いけど、どうやら、野菜ベースのベジポタっぽい。夜中の3時まで営業しててロケーションもスクムヴィットソイ4、ナナ・プラザの奥のほうなので夜食に使える。ベジポタっぽいスープは胸焼けしない軽さ。でも、ぱさぱさチャーシューがかなりマイナス、残念。
幸昌
シンガポール資本になって再起した魚昌がオープンさせた九州系とんこつラーメンのお店。昨年末にオープンしたばかりのルーキー店。とんこつの旨みが凝縮された濃厚コッテリ系のスープだけど、不思議と臭みが無いが油脂はかなり有りそう。九州ラーメン基本のトッピングは、チャーシュー、煮玉子、キクラゲ(なぜかまるごと)、ネギ。
秀家
今年に入り、トンロー店をオープンさせてから人気急上昇中の「横濱家系ラーメン」。ギトギト油の醤油とんこつスープはコッテリ度も獣の香りも十分。麺は太麺でワシワシいく感じ。家系の基本を踏襲したトッピングはチャーシュー、ホウレンソウ、ノリ。ここもチャーシューはややパサつき気味。ひっそりと頑固にラーメンだけを作り続けるストイックな雰囲気のお店は日本人的には好感度だけど、タイ人には敷居が高いかもしれない。
あらとん
今年2月にラチャダにオープンした北海道は札幌から出店してきたお店。濃厚なとんこつスープで魚のあらを焚いて出汁を引くという独特な製法で作るコッテリスープが特徴。豚からの獣臭を凌駕する魚の生臭さは好みが分かれるだろうが、個人的にはOK。トッピングはチャーシュー、メンマ、ネギ+ネギとシンプル。ラチャダのロビンソンの地下にあるTopsの奥にあるロケーションはかなりマニアック。
ばんから
2008年のオープンから、はや4年が経ったが、いまだに行列ができる人気店。どのメニューをたのんでもコッテリなラーメンだが、とんこつは特にコテコテでクリーミーなカルボナーラ状態。見ただけで胸焼け警報が鳴り続けるギトギトな風景。トッピングはチャーシュー、ノリ、キクラゲ、ネギ。卓上の紅ショウガの存在が妙にありがたく感じる一品。
山小屋
2006年、バンコクに初めて登場した本格九州とんこつラーメン。店に入った瞬間に獣の香りに悩殺される。臭みがどうとかあまり考えないで豚骨をただひたすら煮込んだような濃いスープ。極細でポキポキした食感の低下水な麺。チャーシュー、ネギ、キクラゲのトッピングも九州とんこつラーメンの基本。ちなみに、このお店のタイ側パートナーはビアシンで有名なブンロート社。現在、10店舗がバンコク都内に展開中。
きび
2010年の暮れ、突如東京の人気ラーメン店が同時オープンしたトンローのラーメンチャンピオンズ。最近は、オープン当初の人気も衰え、いつ行っても行列せずに入れるが、いまだに人気は高い。
その中の「きび 桃太郎外伝」は鶏スープ専門。特に鶏白湯ラーメンはあっさり塩ラーメンのような見た目とは正反対の濃厚スープ。葛餡のようなとろみ加減と天 下一品のようなコッテリ感が特徴。トッピングは鶏の照り焼きとホウレンソウにネギ。濃厚ではあるが、とんこつとは違った鶏白湯の軽さに救われる。
せたが屋
せたが屋もラーメンチャンピオンに出店中の東京では有名なお店。本来は魚介系の出汁が効いたお醤油系のスープが売りだったはずですが、ここにもコテコテ系のメニューがある。その名も「魚郎ラーメン」。一瞬わけわからないネーミングだけど、あのラーメン二郎にインスパイアされてできたメニューらしい。個人的には「魚二郎ラーメン」にほうが語呂がいいとも思うが、大きなお世話だろう。
見た感じは二郎というより、千駄ヶ谷のホープ軒や環七の土佐っ子を思い出す背脂チャッチャ系な風貌。キャベツ、モヤシの上に大きなチャーシューが2枚乗ったトッピングをみると、マシマシコールをしたい衝動に駆られるが、それはやってないらしい。麺は力強い太麺系。スープはいわゆるとんこつ醤油+背脂。スープにとろみが出るようなコッテリ系ではないが、油ギトギトのコテコテ感はたっぷりと味わえる。
今回は日本から上陸してきたラーメン屋さんの中でも特にコッテリコテコテ系を売りにするお店を紹介したが、なぜバンコクの日系ラーメン店にコッテリ系が多いのだろう。
いくつか考えられる理由を挙げてみると、1)食材が高い:豚骨、鶏ガラなどのタイ国内で調達できるものに比べて魚介系のカツオ節、煮干しなどの輸入食材はコストがかかる、2)水が合わない:タイの水は日本と違って硬水なので、魚介系の出汁を引くのには向いていない、3)タイ人は、基本的に脂多め、カロリー高めな食生活をしているので、油脂を多く含んだスープが好まれるから、などが考えられる。
いずれもちゃんと検証したわけでなく、単なる仮説に過ぎないが、バンコクで日本食店をやっている人、これからやろうと思っている人のご意見も聞いてみたいところだ。
ちなみに、個人的には鶏ガラ+醤油ベースの「東京ラーメン」が基本の基本と書いたが、自分にとってやはりラーメンの理想形は荻窪の「春木屋」。もちろんこのお店を超えるラーメンを出してくれるところはバンコクにはない