今年もタイの外食産業、特に日本食レストランは出店を加速させ、その勢いは衰えを見せない状態。今回は今年を振り返って、2011年に新規でタイに出店したお店を中心にご紹介。
2011年、注目されたのは吉野家、すき家という日本の外食業界をリードするトップブランドの出店。日本人なら誰でも知っている牛丼チェーン最大手が時を同じくしてタイに上陸。これまではどちらかというと日本でもマイナーなチェーン店、地方でしかみられないお店とかが出店するケース目立ち、少子高齢化で縮んで行く日本の外食市場(特に地方)に危機感を持った中小の外食系が海外に活路を…
なんてノリが多かったわけだけど、今年はいわゆる「勝ち組」的な大手が進出。
むつみ屋 (ラーメン・トンロー・3月)
むつみ屋北海道ラーメンのチェーン店。トンローソイ10のラーチャンに出店しそうな、あるいは、お店の前にオーナーが腕組みしてバンダナとかタオルを頭に巻いてる看板を出しそうな系のお店。日本では、東京の八重洲ラーメンストリートに出店するなど有名店らしい(?)。ラーメン激戦区トンローのソイ13のSeenSpaceに出店するが、立地も影響したのか知名度はイマイチ。10月に2号店をCWPのフードコートに出店。近々3号店を出店予定。
札幌でもなく旭川でもなく函館でもなく釧路でもない北海道ラーメンとのことですが、塩、醤油、味噌、豚骨などスープのバリエーションが多い。個人的には、出汁の香りが強い醤油が好み。全体的にはバランスがいい優等生的なラーメンって印象。
タイローカル企業のオーナーが日本のむつみ屋とフランチャイズ契約で運営。オーナーの中には超有名ローカル企業の御曹司も加わっているからかオープニングイベントとかもやたらと派手。
秀家 (ラーメン・ラマ9・1月)
バンコク初の「家系ラーメン」として今年初めにオープン。日本人が個人経営で立ち上げた模様。ローカル食堂レベルの手作りっぽいチープな内装。1号店はまさかのラマ9通ディンデン付近のかなり不便な立地。2012年1月にはトンロー近くに2号店出店の予定。
スープは「橫濱家系豚骨醤油」の一種類。かなり濃厚こってりタイプ。麺も家系と言うことで太麺を使用。豚骨こってり一直線って方にはいいかも。デフォのトッピングの海苔、青菜、チャーシューだけだと、ちょっと寂しい。
すき家 (牛丼・シーコン・5月)
日本最大の外食産業ゼンショーがタイに初出店。すき家自体も吉野家を超える日本最大の牛丼チェーン。シーナカリン通りのシーコンスクエアに1号店を出店。今後かなりのスピードで出店を加速していく予定。2号店はアソーク、3号店はエカマイとか。
セントラルグループ、オイシなどのビジネスパートナー的なタイ側企業はいないらしい。
牛丼一杯69Bの価格は、ローカル牛丼店の「牛野家」120B、あとから出店した「吉野家」の109Bを大きく下回り、かなり戦略的な価格帯。パクチー牛丼、プーパッポン牛丼などタイでしかあり得ない(タイでもあり得ないよね?)ゲテモノ系のメニューが目を引く。大きく分けて牛丼とカレーの二系統メニュー。残念ながら、グループチェーンのなか卯系のうどん系、親子丼はなし。
吉野家に比べると、かなり甘い味付け。日本でもそうなんだろうか。個人的な好みからいうと、吉野家>牛野家>すき家の順。余談だけど、牛野家の牛丼、最近デフォで汁ダクになったような気が。オーダーの時にきっぱりと言わないと牛丼雑炊が出てきちゃうのが頭にくるんだけど。
古奈屋 (うどん・ラマ9・6月)
東京は巣鴨に本店があるカレーうどんのチェーン店。1号店はラマ9通りに今年オープンしたMBKが母体のショッピングモール「ザ・ナイン」内に出店。10月にはファッションアイランドが母体となるアソークのターミナル21に2号店を出店。
シンハービールを展開するビール大手「ブンロート社」がフランチャイズで展開する。ちなみにブンロート社は九州ラーメン「山小屋」も同様に展開。ビールと麺類のつながりはなにがあるんだろうか。
カレーうどんが一杯200B超。かなり強気なプライシング。なんの予備知識もなく臨店。予期せぬクリーミーな担々麺風な見た目にちょっとビックリ。このスープ、カレールウに牛乳やフルーツのすり下ろしを加えているらしい。麺はコシというよりもちもち感が強い印象。カレーうどんなんて、そば屋のカレー南蛮のうどんバージョンだと思ってた人間にとってはかなり別世界の味。
横井うどん (うどん・スクムヴィット ソイ39・9月)
タイには15年以上前、伊勢丹のオープンと同時に進出してきたうどん屋の歌行燈が経営するセルフ方式の讃岐うどん店。家族亭をはじめバンコクにはうどんをメインメニューで扱うお店が多いけど、セルフ方式は初めて。
実は最近知ったんだけど、歌行燈は三重県に本社がある明治10年創業、老舗のうどん屋。そこの社長が横井さん。そして、歌行燈グループのなかのセルフ方式の讃岐うどん専門店の屋号が「四代目横井製麺所」とのこと。
うどん一杯が69Bからとかなりリーズナブル。ちなみに日本の横井製麺所ではかけうどん1杯280円。日本の讃岐うどんブームの時にはもうタイに住んでいたので、こういうセルフ式のうどん屋は初体験。場所柄かお客さんのほとんどは日本人だったけど、お好みで揚げ物などを好きなだけトッピングできるシステムはタイ人にもうけるかも。
ただ、何度かトライしてみたけど、ここの揚げ物はちょっと苦手。油ぎれがイマイチのよう。かけうどんかぶっかけにネギを大量投入する食べ方がお気に入り。そして、かけうどんには卓上の出汁醤油をたらすとちょうどいい。関西以西の人にこんなの見せたら、逆上するかもしれないけど、東京出身の味覚にはこれがちょうどイイ感じ。
旬の舞 (日本食・トンロー・9月)
旬の舞日本の家族亭がプロデュースするオーダーブッフェ方式の日本食レストラン。家族亭はタイで既に家族亭の屋号でオイシグループからそばとうどんの店を手がけているが、旬の舞はオイシグループとは関係のないタイのローカル企業(自動車部品メーカー)が経営する日本食店。食材の手配から調理、従業員のサービスに至るまで家族亭から派遣された日本人スタッフが徹底的にトレーニング。
メニューは寿司、刺身、炭火焼、鉄板焼、天ぷらなどタイ人がイメージする日本食メニューが一通りそろう。オーダーブッフェ方式で注文が入ってから調理するんだけど、オープンキッチンになっているので自分の料理が出来るのを目の前で眺めることが出来るのが特長。オイシの日本食ブッフェをワンランクグレードアップしたような内容。
基本、タイ人向けの「フルラインアップ日本食」といった感じだけど、日本人のトレーニングの成果かちゃんとした日本食を出すレベルに仕上がっている。680バーツで2時間の食べ放題。メニューをよぉくみて食材の高そうなものを重点的に攻めれば、コストパフォーマンスの高い満足感を味わえるはず。狙い目は寿司、刺身かな。
あと、サラダバーには和風の総菜も各種並んでいて侮れないレベル。肉じゃが、カボチャの煮付け、ポテトサラダなど懐かしい味の名脇役。もっと高そうなメニューをどんどんオーダーしなければと思いつつもついついお皿によそってしまう心憎らしくも美味しい演出。
吉野家 (牛丼・ラプラオ・9月)
吉野家10年以上前にタイから一旦撤退。その後、何度か再上陸の噂が立ってたけど、このたびついに再上陸を果たした吉野家。1号店はセントラルラプラオに9月、2号店は11月のターミナル21,そして12月にセントラルラマ9に3号店をオープンさせた。
大戸屋、ペッパーランチ、ちゃぶとんラーメンなどの日本食チェーンをはじめ、KFCなどの外食チェーン店総数600店舗以上をを運営するCRG(セントラルレストラングループ)が吉野家のタイでの展開を担当する。この調子でいけば、バンコクどこでも吉牛が食べれるようになるかもの期待に胸がふくらむ。
メニューは牛丼以外に鳥照り、鳥天、豚天、豚生姜焼きなどの丼ものが中心。牛丼の味はほぼ日本の吉野家の味を再現している。すき家ほどではないが、牛丼一杯109Bと言うのも魅力的。
飲んだあとに〆で牛丼って好きなんですが、CRGの展開ということで、たぶん出店はショッピングモールとかホームセンターの中に限定されるような気が。やっぱり、これからも飲んだあとの牛丼はタニヤの牛野家ってことになりそう。
さて、ここに紹介した以外にも数多くの日本食レストラン、日系外食チェーンが今年も数多く出店してきた。ぼんくら桃太郎、なぎや、そばQ、かごの屋、大枡屋、丸玉ラーメン、モーモーカレーなどなど。こういったお店も別の機会にご紹介するとして。営業を続けていればの話しだけど。
タイの外食産業を日本食レストランが牽引していくって傾向は、来年もさらに続く見込み。牛角、幸楽苑、がってん寿司、ステーキのけん、丸亀製麺、大連餃子基地などの新規出店の噂や、出店先となるショッピングモールもメガバンナー、エカマイゲートウェイ、日本村モール、スクムヴィットソイ47のレインヒルなどの計画も。いまから楽しみな2012年タイの日本食事情。