タイ国内における食品の流通と小売市場
タイ国内における食品の流通と小売市場国家経済社会開発委員会(NESDB)によると、タイの卸・小売部門は、2011年の暫定値ではタイの実質GDPの14%を占めており、タイの経済において、流通の占める割合は決して小さくないといえる。
タイおいて食品の流通は、主に製造者・生産者から卸などの中間流通業者を経由して流通する点は日本と共通するが、以前は伝統的市場における小売や、伝統的市場からさらに家族経営の小規模な小売店を通じて最終消費者の手に渡ることが多かった。
しかし、近年は特に都心部で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアのような近代的小売店の勢力が強く、特に2003年以降は、近代的小売店の占める割合が大きく伸びる傾向にある。
近代的小売店が関与する食品の流通では、小売店自らが物流・配送センターを持ったり、消費地の市場を通さず製造者や生産地市場から商品を仕入れたりする場合が多く、これら効率的な物流の構築と大量仕入れの実施などにより、商品価格を低く抑えることを可能としている。
このことにより、近代的小売店、特に低価格を売りにしているハイパーマーケットは、価格の面でも伝統的市場に対して競争力を持つようになっている。
ハイパーマーケット、コンビニエンスチェーンの出店は拡大傾向にあるが、依然、都市部以外では伝統市場や個人商店が日常の食品購入場所としての立場を保っている。
2013年度のタイ人の食事情とは?
アジア通貨危機以降のタイ経済は発展し、タイ人の所得も向上した。特に都心部では会社勤めに出る人が増え、ライフスタイルは十数年の間に大きく変化している。
ジェトロ・バンコク事務所が2012年2月にバンコク在住のタイ人400人を対象に行った「食生活に関する調査」によると、レストラン、大衆食堂、屋台での食事、または飲食店から料理を持ち帰り、家や職場で食べる頻度は「毎日」と「2〜3日に1回」を合わせると、朝食では6割強、昼食では8割強、夕食では5割強と各食事とも半数を超えた。
また、タイは惣菜など調理済みの食料を買って家で食べるという中食の文化が一般的に根付いている。2006年に行われた民間調査会社ACニールセンの消費者調査では、タイは「頻繁に食事を買って帰る」、「時々買って帰る」割合が調査対象国41ヵ国中もっとも高く、中食率世界一という結果であった。
中食を利用する理由について「便利だから、料理する時間がないから」という回答が70・3%と圧倒的多数を占め、2番目の理由には「材料を買って家で料理するより安いから」があげられている。
タイ(とりわけバンコク)では、フルタイムの仕事を持つ女性が多いこと、渋滞が著しく通勤に時間がかかることなどを背景として、料理に要する時間を節約できる中食が支持されている。
また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、屋台でおいしくて安い総菜が手軽に手に入るため、少人数世帯では自炊が必ずしも節約にはならないことや、中流以下のアパートではキッチンを備えていない部屋が多いことなどもタイで中食が支持されている背景にある。