洪水被害などに苦しむ農家への救済策としてタイ政府が実施する「コメ担保融資制度」が苦境に立たされている。中間業者による「中抜き」や逆ザヤ、市場価格の低迷など公費にかかる負担も深刻になりつつある。
昨年10月から実施された同制度。農家に対しコメを担保に事業資金を貸し付ける制度で、洪水の被害や物価の上昇などから経営に苦しむ農家を救済する目的で始まった。
ところがコメの評価価格を実際の流通価格の30~40%以上も高めに設定。負債が高額化するなど返済できなくなる農家が続出したことから、ここに来てやむなく政府が担保のコメを競売にかけるようになった。
だが、そもそもの貸付額がコメの資産価値を上回っていたことに加え、このところコメの市場価格が低迷。「1トン当たり5000~6000バーツも逆ザヤが発生している」(関係者)という。
加えて政府が頭を痛めているのが、貸付過程における中間業者の介在。いくつもの仲介業者を通すことで何度も手数料が抜かれ、最終的に農家の手に渡ったころには、「もともとの貸付額の6割しかなかったというケースも」(同)。政府の手の届きにくい地方で顕著だといい、「なかなか打つ手がない」といった状況だ。
民間の試算では、貸付金の焦げ付きを政府がこのまま競売で回収したとしても、最終的に50億~100億バーツの損失が発生するとの予測もある。野党民主党などからは「大衆迎合策のツケだ」などと批判も高まっており、融資制度は崖っぷちの状況にある。