新たな産業回廊としての期待が高まる東南アジア・ミャンマー南東部の都市ダウェー近郊。年間降雨量が5000ミリを超す熱帯の一漁村が注目されるのは、ここにミャンマー政府が検討を進める深海港や工業団地など巨大なインフラ計画があるからに他ならない。その開発計画が事業調査の着手から20年目の今年、ようやく動き出す見通しとなっている。
開発を支援するタイとミャンマーの共同委員会はダウェー近郊の一帯を経済特区(SEZ)と指定。開発の母体となる特別目的事業体(SPV)をタイに置き、深海港、道路、電力、工業団地など各種インフラごとに現地子会社を設け、開発を進める方式を採ることでこのほど合意した。
これにより、来年2014年までには具体的な事業計画として動き出すことは確実な情勢で、ダウェーの深海港プロジェクトは計画から20年目にしていよいよ現実味を帯びてきた。
同プロジェクトをめぐっては1994年、タイの建設業界最大手イタリアン・タイ社がミャンマー政府から事業調査を受注。マスタープランを作成したが、資金繰り等で事業計画が何度も停滞しており、仕切り直しを求める声が相次いでいた。
タイ政府としては、このままイタリアン・タイ社一社に開発を委ねるのではなく、日本の高い技術力も取り入れた「共同開発」の方が確実だと判断。昨年8月には日タイ両国の経済産業担当大臣会談で正式に参加を招請、日本政府もこれを取り入れた。これまでに、インフラシステムの輸出に向けた入札などを実施している。
一方で、市場関係者によると、ダウェー港プロジェクトをめぐっては中国資本も関心を示しているとされ、タイやミャンマーへの積極投資を続けている。総事業期間が10年を超えると予想されるビッグプロジェクトは本格始動することにはなったが、その行く末はまだ混沌としている。