香港などと並び模倣品(海賊品)の「聖地」などとありがたくない汚名を着せられ続けてきたタイ。こうした負のイメージを払拭しようと、タイ政府は知的財産権の保護強化に取り組んでいるが、このほど商務省知財局は航空機などで模倣品を個人が持ち込んだケースであっても、コピーと知りつつ持ち込んだ場合は処罰の対象とすることを決め、航空局や入国管理局と連携を図っていく方針を固めた。
対象となる物品は、携帯電話やスマートフォン、DVD、CD、カメラ、パソコンなど家電製品や著作出版物など全般。先ごろ、米アップル社のiPhone5が新規発売されたが、タイでは未販売。すでに香港などでコピーiPhone5などが出回っているとの情報もあり、警戒を強めることにしている。
航空機などで模倣品を持ち込もうとした入国者に対しては、コピー商品と知っていたかどうかの意思をまず確認。タイ国内には持ち込めない旨、警告を発したうえで、従わずに抵抗するなどした場合は物品を没収のうえ身柄の拘束もありうるという。
タイ政府がここまで強力に知的財産権の保護に乗り出す背景には、長年悩まされてきた模倣品への強い反発があった。6月には特別捜査局(DSI)がバンコク都内のホテルに隠匿されていた偽ブランドのバッグや時計などを発見、押収したが、その数は2000点を超え、被害金額は1000万バーツ(約2600万円)にも上った。
5月には米人気歌手、レディ・ガガさんが来タイ。この際、ガガさんが「バンコクで偽物のロレックスを買いたい」とツイートしたことから知財局幹部が抗議、声明を発表する一幕もあった。
最近は、家電や出版物にとどまらず、食品や化粧品にまで横行するコピー商品。「イタチごっこ」と評する識者もいるが、タイ政府が手綱を緩める気配は当分ない。ミャンマーやカンボジアに密造工場があるとの情報もあり、関係国とも連携を取って摘発に務める意向だ。