連載内連載でお伝えしている「AECって言うけれど…」シリーズ。今回は域内主要各国の法定最低賃金について。まだまだ大きな格差のある人件費。たかが賃金、されど賃金。貴方なら、どう読みますか?
ASEAN域内の主要都市について、月額の法定最低賃金をまとめたのが上図のデータ。タイなど最低賃金が日額で定められている国については、1ヵ月の就労日数を20日間と仮定して算出した。20日を超えて働けば、当然、賃金も増す計算。マレーシアとミャンマーには法律で定められた最低賃金の制度がないので除外した。
2012年から始まった最低賃金引き上げ策で、タイの人件費は今や中国の沿岸都市に肩を並べるまでに高額化した。タイに次いで工業化が進むインドネシアやフィリピンでも、150米ドルを超えるまでに上昇している。
一方、ベトナム、カンボジア、ラオスでは、まだまだ100米ドルにも満たず、タイの半分以下。特にベトナムでは日系など多くの海外企業が進出しているというのに、低水準にとどまっている。
それにしても、タイの人件費は、いつごろから、このように高額化したのだろうか。それをまとめたのが下図。首都バンコクと多くの工業団地があるアユタヤ県の最低賃金推移を抽出した。
驚くことに、24年前の1989年1月当時は、バンコクを含むタイ全域で日額の法定最低賃金は100バーツ未満。バンコクが100バーツにようやく達したのも1991年4月のことで、アユタヤでは2年後まで待たねばならなかった。
その後の推移はごらんのとおり。毎年のように少しずつ引き上げられ、グラフでは省略してあるが、バンコクで200バーツを超えたのはわずか5年前の2008年6月のこと。アユタヤでは、2011年の段階でも、まだ190バーツだった。
全国一律300バーツへの引き上げで、地場を中心に企業の倒産などが一部に見られたが、それでも成長を続けるタイ経済。政府は「今後、当面の引き上げはない」とはしているものの、引き上げ策がかなりのインパクトを与えたことだけは確かなようだ。
「AECって言うけれど…」シリーズは今回でいったんおしまい。次回からは、再びランダムにタイの「数字」のあれこれをお伝えします。
さまざまな統計データを元に、タイと日本、タイと世界を比較するコーナーを新たに設けました。題して「数字で見るタイ事情」。ビジネスや経済ネタだけに限らず、タイ社会のちょっとした話題を提供します。不定期掲載。