なんとなく始めた本企画も、こだわっているうちに少しは面白くなって、はや10回目。今回からしばらくは、2015年末に誕生するASEAN経済共同体(AEC)を特集してみることに。「AEC、AECって言うけれど、他の経済共同体と比べてどうなの?」。まずは、こういった疑問にお答え!
AECのモデルとされたのが、2007年に現27カ国体制となった欧州連合(EU)。1997年のアジア通貨危機当時、欧米や日本の資本が東南アジアから離れてしまうことに対する懸念が背景にあった。
2002年の首脳会議で当時のゴー・チョク・トン・シンガポール首相は「通貨危機以降、ASEANの外国投資を誘致する力が弱体化しており、統合の深化が唯一の方法」との見解を表明。危機後の東南アジアの再興には市場の統合が必要との考えを示した。
ただ、ASEAN加盟各国がEU型の経済統合を当初から目指していたかについては、温度差もあって一概にそうとは言えない。
2008年から12年まで事務総長を務めたタイ出身のスリン・ピッサワン氏は「EUはASEANの動機だが、地域体のモデルではない」「開発と統合は自らのペースで進める」と繰り返し述べるなど、独自の「統合」を進める意向を繰り返し示している。
その背景には、①EUやMERCOSURなど他の経済統合体との経済発展の進行速度や貿易規模の違いが挙げられるほか、②同じASEAN域内にあっても人口比など市場そのものの違い、すなわち産業構造の相違があるためと考えられている。
ASEANの市場が統合してできるAECは、その意味でも世界に前例のない新たな試みであると言うことはできる。(続く)
さまざまな統計データを元に、タイと日本、タイと世界を比較するコーナーを新たに設けました。題して「数字で見るタイ事情」。ビジネスや経済ネタだけに限らず、タイ社会のちょっとした話題を提供します。不定期掲載。