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タイの生霊とタクシー・・・

タイの生霊とタクシー・・・

見えるはずの無い・・・

タイに来て6年目の事でした。私は熱が41度も出て下がらず、会社を休みアパートで寝てました。頭の痛みと体の熱と寒気で、体力を消耗して起き上がる事も出来ない状態でした。妻は「医者を連れてくる」と言うと出かけて行きました。

妻が出かけて私独りになるとアパートの10階の私の寝ている部屋の窓に絶対に見えるはずの無い顔や目や人影が私の目に見え始めました。笑っている者。怒って居る者。悲しい顔の者。泣いている者。真っ黒な影。白い影。色々な顔や影が次々と走馬灯のように、窓に映りました。

しばらくすると奇妙なことが起きました。グルグル回る顔のひとつが私に近寄ってきました。私は意識モウロウとする中、その近づく顔を払いのけるのですがうるさいハエのように私の頭や顔の周りをグルグルと回り、突然静止すると私を睨み付け消えて行きました。20分ほど過ぎたころでしょうか?私の体がいきなり楽になりました。私は「どうしたんだろうか?」と考えました。私は「きっと先ほどの顔が私の体から去って行ったので楽になったのだ。」と思い体を起こしました。

私は今さっきまで苦しんでいたのが嘘の様に,晴れ晴れとし始め部屋には居られないくらい体も元気になった様に感じました。私は先ほどの睨み付けた顔に感謝しました。私は「これなら医者など要らない」と思うと妻を呼び戻しにでかけました。エレベーターに乗る足取りも軽く、下の階に向かうボタンを押しました。玄関を出て上を見上げると,まぶしい陽差しが私の顔を照らしていました。私は手でひさしを作り顔を隠し妻が向かった病院に向かいました。病院は歩いては行けないので、タクシーを捕まえる為に大通りに向かいました。

出会ってしまったタクシー・・・

何時もの大通りとはうって代わり排気ガスとドブの腐った匂いがなく、本当に綺麗な町並みに見えました。通りに出て手を上げると、何時もはつかまりにくいタクシーも直ぐによって来て私を拾いました。でも何時も乗るタクシーと様子が違う事に気がつきました。

何時もは、私から場所を言わないと答えない運転手ですが今日は違ってました。タクシーに乗ると運転手の方から質問がありました。「どこの病院に行きますか?」 私は驚きました。私は「どうして私の行く先が判るんだ。」と思いました。私は気を取り直して「よほど感が強い運転手さんだなー」 と心で思い私は素直に病院の名前を告げると、運転手は黙って車を走らせました。

私は病院の前に着くと料金を支払おうと運転手に聞きました。「幾らですか?」と聞くと運転手は「私もこの病院まで来る用事があったので代金は要らないよ」と言いました。それと私に運転手は何かカードのような物を渡してくれました。私は「割引券か指名券かな?」と思いポケットにしまい運転手にお礼を言うと妻が先生を呼びに行った病棟に向かいました。

妻が待合室に居て看護師に仕切りにお願いしている姿が見えました。看護師は「外来往診はしませんので病院に連れてきてください。もし駄目なら救急車に乗せて連れてきて下さい。」そういうと診察室に消えて行きました。私は妻に近づくと「おい俺はこんなに元気になったぞ」と言うが妻は私を無視したように病棟や病院の門を後にした。私は「どうして気がつかないのか?」不思議におもいました。

私はまたタクシーを拾おうと外に出ると待っていたかのようにあのタクシーが私の前に停まったのです。

私の気持ちがわかる運転手・・・

運転手は「どうでした。病院は?」と私にたずねて来ました。私は、その返答に答える事なく無言でタクシーに乗り込みました。運転手も私の気持ちがわかるのか、無言で最初拾った場所まで来ると私に話しました。「お客さん。このままだと本当にあなたは死にますよ。気をつけてください。」そういい残すとまた代金もとらずに立ち去って行った。

私がアパートに入るとかみさんはベットに向かい泣きながら何か言っていた。私は「ここにいるよ。」と近寄るとベットにはもう意識の無い私の姿が在りました。かみさんは私の脇を通り過ぎ、病院で言われたように救急車を呼んだ。30分ほどして救急車が到着しました。私はタンカに乗せられ車に運ばれると、妻も一緒に乗り込み病院目指して出発した。

救急車は病院に到着すると救急病棟の医師が駆け寄ってきた。看護師や助手も私をタンカから移すと酸素マスクや血圧や心電図を測りだした。医師はかみさんに向かい「奥さんどうして早く連れてこないんだ。もう危ない状態だ」 とつげると点滴の針を刺した。その間にも色々な注射を点滴の中に注入した。それをもう一人の私は涼しい顔で見ていた。脇で見ている私は、寝ている私を見て他人の様に眺めていた。

私はその時、気がついた。私の周りには色々な白い人影が漂っているのを見た。お婆さんやおじいさん、若い女性や男性が私のベットで寝ている様子を伺い私に話しかけてきた。「お前さんもうじき死ぬな。私たちが見えるお前さんはもう死期が近い。お前さんは俺たちと同じように戻れなくなる。」そう告げると私を残して何処かに立ち去って行った。

運転手から受け取ったカード・・・

私はその時、ようやく気がついた。「私が死ぬのだと。」大きなため息がでた。浮遊する中、ボーと私が眠るベットを眺めていた。外ではまた事故があったのか、遠くでサイレンの音が鳴り響いていた。私は揺れながら自分が寝ている姿を眺めていた。

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その時。先ほどの運転手の渡したカードがポケットの中で妙に私の手に触れている事に気がついた。カードを握りポケットからだすと顔の前に掲げた。それはカードではなく経文がびっしり書かれた色紙だった。

私はその経文を見ると口ずさみ始めた。自分でもどうしてかわからない。自分がベットに横たわる姿を見て死期が近づいた事を悟ったように自然に口ずさんでいた。すると読んでく内に,私の浮かんでる体が寝ている私に引き戻されて行くのを感じた。そして、横たえる体に入った瞬間。「ゴロゴロドドン」と言う雷の音と凄まじい光の中、私は私の体に戻った。

目を開けると天井が写った。そのとたん。医師の声が私の耳に響いた。「意識が戻ったぞ。早く手当てだ。」 そう言うと看護師が数人私を取り囲むのが判り遠くで妻の声にならない様なうめき声にも似た,声が私の耳に聞こえた。

退院の日・・・

それから5日私は順調に回復して歩く事が出来るほどになった。外の日差しを浴びて散歩した。私の目には、もうあの浮遊する人影は見えなくなっていた。退院の日が来た。私はおぼろげに、病院の玄関の前で立ち止まり周りを見渡しあのタクシーを捜した。

しかし、あのタクシーは見当たらない。一言あの運転手がくれたカードの事。タダで病院まで運んでくれたお陰でまた戻れた事を思うとどうしても挨拶やお礼がしたかった。妻は近くに来たタクシーに手を上げて停めた。妻に手を引かれタクシーに乗り込んだ。

私の脳裏には、まだあのタクシーの運ちゃんの声が響き出していた。「お客さんこのままだと死ぬよ。気をつけてください。」 その声が時々聞こえてくるような気がした。あの運転手は何者だったのだろうか?

時々私はあのタクシーを街の中で思い出したように探し続けている。

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