ひさしぶりに東京に帰って来たら、季節外れの冷え込みもあって、4月だというのにずいぶんと寒い。普段タイにいるときと違って、いろいろと着込まなくてはいけない。一年中暑いタイにも比較的涼しい時期はあって、特に北部では意外と冷え込むこともある。そんな乾季の北タイでは、衣服を身に着けた野良犬を目にすることが頻繁にある。
飼い主のいない野良犬に服を着せているのは、ほとんどの場合近隣の住人である。彼らは決して犬たちにオシャレを施しているわけではない。防寒のためだ。自分たちが長袖を着たり何かを羽織ったりする季節には、路上で暮らす犬たちもいつもの通りの裸ん坊では寒いのではないかと考えるのだろう。その考えは間違えていないと思う。北の地でソリを引くこともある犬だが、熱帯の犬にはそんなことはできない。
タイの犬は熱帯生まれで、寒さを知らない。乾季の冷える時間帯には、犬たちは寒さを感じていると思う。気温が25度あたりを下回ると、犬たちは体を丸め始める。私が以前めんどうを見ていた犬は、20度を下回るとガタガタ震えてかわいそうだった。たしかに人間もいつもの真夏の装いでは、25度や20度となれば肌寒くも感じる。乾季に服を着せてもらうのは、犬たちにはきっとありがたいことなのだと思う。
それにしても、この犬たちに着せる服はどこから持ってきているのだろう。よく見ると犬用の服ではない場合もある。子供用のシャツであったり、何かの布を縫い付けたものであることもある。どちらにしろ、路上で暮らす野良犬たちのためにわざわざ衣服を用意する人がいるということだ。