ウボンラチャタニーはイサーンと呼ばれるタイ東北部の最果ての都市。毎年本格的な雨季が始まる7月中旬に、ここで盛大なお祭り行事が開催される。タイの三大祭りの一つ、キャンドルフェスティバルだ。
これは雨季の間、僧侶が寺院にこもって修行の際、学業をするための灯りとして信者が彼らにローソクをささげたことが始まりだとされている。以前からいつか行ってみたいと思っていたキャンドルフェスティバル、ついに願いが叶う!
晴天のバンコクからたった1時間のフライトだったのに、空港に降り立つとあいにくの雨模様。いやな予感がする。
スケジュールによるとこのお祭りの見どころは二日間しかない。初日の夜は各寺院が丹精込めて製作したロウ彫刻の山車のお披露目ショー、二日目は綺麗に着飾った踊り子たちの踊りも見ることができる山車のパレード。いずれも数時間の予定、そしてこの天候。いい写真が撮れるチャンスはごくわずか。
初日、日もどっぷり暮れ、会場に足を運んでみるとすでに辺りは黒山の人だかり。無数の屋台群がいやが上にも期待を高ぶらせる。その真ん中にダンプカーのように巨大な山車たちが、煌びやかな装飾を纏って静かにその出番を待っていた。一年にたった一度のために長い準備期間を費やしてきた地元の人々も気合満点だ。老若男女、まるで街中の人々が会場に詰めかけているかと思うくらいの熱気と迫力に圧倒されてしまう。
ライトアップされた山車は暗闇の中で一層輝きを増していた。彫りが深い彫刻も魅力的だ。この芸術品をカメラに収めようといろいろなアングルから狙ってみる。人が多すぎて三脚も使えないので、カメラの高感度設定をできるだけ高めにして、息を止めながらの手持ち撮影に終始。慣れない地理と少ない情報の中、一枚でも多くの写真を撮ろうと会場周辺をカメラを抱えて駆け巡る。
仮設のグランドスタンド前では華やかな民族衣装を着た踊り子たちのパフォーマンスが楽しめる。大勢の観客たちがその一糸乱れぬ踊りと彼女たちの微笑みに酔いしれていた。
次の日の朝、この祭りの主人公である山車の雄姿をダイナミックに撮ろうと思い、昨晩あらかじめ狙っておいたポジションに陣取る。今にも泣きだしそうな雨空を気にしながらもパレードは定刻にスタート。息をのむほどの大迫力の山車とそれに続いていく踊り子たちのやわらかでしなやかな踊りが対照的で興味深い。ディテールを見ると踊り子たちの指の先端の動きが実に流麗だ。この流麗さをなんとか時間を止めた一枚にできないだろうかと試行錯誤繰り返す。撮影しているとき、難しいと感じる瞬間が実は一番楽しい。望遠レンズに付け替え、連写モードで踊り子の動きを止める。
その後、スコールに見舞われながらも無事パレードは終了。初めてここに降り立ったころはあれだけ雨が降っていたのに、パレードが終わるころには日が差していた。
あっという間に終わってしまったキャンドルフェスティバル。大迫力のロウ彫刻の山車、美麗な踊り子たち、そしてそれらを見て、歓声を上げて祭りを楽しむ人々。何よりも自分もその一員になれたということがうれしかった。“楽しかった!また戻ってきたい”と心からそう感じるところ、ウボンラチャタニー。この写真を見ていただいて、少しでもウボンラチャタニーに行ってみようと感じていただければ幸いだ。