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タイらしくない街チャイナタウン

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私にとっておなじみのフアランポーン駅から西へ西へと交差点を進んでいくと、道沿いに下町情緒あふれる建物と中国語の看板が目立ち始める。どことなく漂ってくる漢方薬の匂いに包まれながら、トゥクトゥクやオートバイが吐き出す2ストロークエンジンの音や煙がなぜか心地よく感じてしまう。

さらに奥へと進んでヤワラート通りと呼ばれる大通りを抜けると、中国語ばかりの大きな看板群とバケツをひっくり返したようなクルマ、バイク、人々の圧倒的な流れに合流することになる。タイの中でも一番タイらしくない場所の一つがここ、チャイナタウンだ。

チャイナタウンらしいエキゾチックな雰囲気を撮ろうと思うと、やはりヤワラート通りの中国語で書かれた看板たちを狙うのが一番手っ取り早いかもしれない。渋滞でゆっくりと流れる車列の間をトゥクトゥクやオートバイが縦横無尽に駆け抜けて行く。通りの両側には、ところ狭しと並んでいる屋台群。そこに看板たちが覆いかぶさるように軒を連ねる。この圧倒的な迫力を表現するために1枚の写真の中にできるだけの情報を詰め込みたいけれど、詰め込み切れないほどのボリュームだ。

チャイナタウンを訪れるといつも不思議に思うことがある。それは、チャイナタウンではイタリアのスクーター「ベスパ」がよく走っているのを見かけることだ。しかも古いモデルが多い。一説によると、その昔チャイナタウンの細い路地では、荷物を運ぶための小さなスクーターとして需要があったのが始まりらしく、今では数こそ減ってきてはいるものの、特に古いモデルは驚くほどの高値で取引きされているらしい。自分がカメラを抱えて中古のベスパを乗り回して写真を撮っている姿を想像すると、なんだかニヤけてきてしまう。気がつくとファインダー越しにベスパばかりを探していた。

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チャイナタウンの中心部はヤワラート通りとジャランクルン通りに挟まれたエリアだ。この二つの通りを結ぶ路地へ入って行くと、中国色がどんどん濃くなっていくのを肌で感じ取ることができる。店の前で自慢の商品を熱く語るおじさん、できたてホカホカのシュウマイを売りさばく若い女の子、もちろん聞こえてくる言葉は中国語だ。数えきれないほどの多くの被写体に囲まれながら路地を探検するのは、カメラマンとして幸せのひとときだ。

路地の中には突然小さな寺院が現れることもある。それらは決まって赤色と金色がベースの派手な塗装がされてあり、カメラに鮮やかな一枚を収めることができる。

夕方に差し掛かると、俄然屋台の数が増えてくる。夜のチャイナタウンはグルメタウンとしても有名だ。屋台の料理人が強火で調理する手品のようなパフォーマンスが始まるころ、巨大な看板群には灯がともり、夜の雰囲気を一層盛り上げてくれる。出来たてのシーフード料理を横目に三脚を担ぎながら一番ネオンが輝くスポットを捜し求めて歩く。「晩メシは納得のいく一枚が撮れてからにしよう」

チャイナタウン周辺は小物や雑貨の店がひしめき合うサンペンレーン市場、その西側に位置するインド系の人々が多く住むパフラット市場、工具や機械が売られている北側のクロントム市場と、まだまだ多くの被写体が潜んでいそうだ。いつの日かお気に入りのベスパを手に入れ、ピカピカに塗装し直して、この辺りをもう一度訪れてみたい。

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