タイの幽霊船・・・

釣りに出向く日

ここはマンダレー海の東。波は静まり今日は絶好のつり日和だ。チョンブリの港を出港した釣り船は6時間掛けてこのつり場に到着した。釣り船の客は私を含め35人みんな選りすぐりの釣り名人がそろった。

海はコバルトグリーンからダークブルーに変わり泳いでる魚が見えるほどに澄んだ水だ。船の魚群探知機がすごい魚影の群れを見つけ出した。船は魚影の海流に沿い停船した。さあ釣りの開始だ。みんなえさを用意してこれから釣れるであろう魚に備えた。

まず最初に船首の先で「釣れたという」叫び声が上がった。他の釣り人にも伝わり次は自分かと待っている。次々に釣れているのが見える。船長も魚の釣れる悲鳴を聞いて目を細めていた。そうして2時間釣りはクライマックスへと向かっていった。

ひとりの釣り客が竿では持ち上げられないほどの引きをしている。周りの人も一緒になって弓なりになる竿を引いたり糸を緩めたりの手助けをしていた。周りの10人ぐらいはその魚の正体が何であるか予想して自分が釣ってるかのような興奮振りである。

その日は釣り日和だった

そして2時間。要約魚の頭が水面に見え隠れするところまできた。一人が騒いだ。「サメだ。」いやもうひとりは、「シーラだ。」一人は「マグロだ」と魚影のヒレが波間に見え隠れするたびに叫んだ。しかし魚との格闘が終わりを告げる時が来た。タモ網を入れて引き上げよと二人係で糸を繰り寄せたときだ。「パチン」と言う音と共に魚の引っ掛けている針が折れた。魚ははじけて海の中に消えていった。

みんなは惜しい獲物を逃したとがっかりしていた。針は300kgに耐えられる強度だった。獲物はそれ以上の大きさであった可能性が高い。船長は「がっかりしないで早く仕掛けを取り替えて次の獲物を狙え」とけし掛ける。気を取り戻しまた釣りに専念し始めたとき出来事は起きた。

私たちの釣り船に接近してくる船の姿が見えた。船から見える船体の距離は約2kmはあっただろうか真っ黒な船体がだんだん接近して来るのが判った。船長は首をかしげている。船のレーダーにはその陰すら映ってない。いつ現れたか判らない。あの大きな魚を釣る事に気を取られていてすべてがおろそかになっていた。私たち35人にも肉眼で見えるほどの距離に接近していた。船長は双眼鏡でその船を監視し始めた。

幽霊船が現る・・・

大砲や機関砲を装備した軍艦である事が判った。しかし領域や総業区を違反しているわけではなく、どうして接近してくるか判らないと船長は首をかしげていた。船長は右に舵を取り真っ直ぐ向かってくる戦艦を避ける行動を取り始めました。

もう釣りどころではなくなった。除け切った戦艦を左方向に見ながらみんなは釣り船の横を戦艦が通り過ぎるのを見守った。戦艦は真っ黒な船体で所々錆と緑色の藻が覆いかぶさるように生えていて国籍はわからずかなり古く、肉眼で確認した限りでは人の気配がまるで無いようだった。酔った釣り客の誰かがどこで用意してきたのか戦艦に向かい照明弾を撃ち離った。

船長はそれを見て怒りメガホンで怒鳴りつけたがう遅かった。照明弾は戦艦の端に届き炸裂した。しかし、誰も出てくる気配も無くユックりとすれ違い離れていった。ホッとしたのもつかの間、2kmほど離れたところで戦艦は左に旋回をはじめたのだ。船長は恐怖に引きつった顔でこれからどうするか考えるように船室に引き上げていった。私は何か手伝える事があるかと思い船長が消えた船室に向かった。

船長はすでにわかってる様子で私に話しだした。「あの船はタダの軍艦じゃない。幽霊軍艦だ。どうしてあの軍艦に照明弾をうち込んだのか?馬鹿な事をしてくれた。」と言うと頭を抱えてしまった。船長はまた話し始めた。「幽霊船のうわさは、船舶会社経由で聞いていた。

しかし現実に私の目の前に出てくるとは夢にも思わなかった。」私は「あの戦艦はもうボロ船じゃないですか?」と聞き返すと船長は「ぼろ舟だがこの船の数十倍はある。あの船に接触したらひとたまりもない。」と強い口調でいいかえしてきた。

それを聞いた私は返す言葉を失った。船長は「あの戦艦からどうして逃げ延びるか考える事が先決だ。」と言うと甲板に上り戦艦の様子をうかがった。戦艦は漁船を敵とみなしたのか旋回を始め真っ直ぐ私たちの船に向かっていた。船長は「これから追いつかれないように全速力で逃げる。この事を乗船客に伝えてくれ」と言うと、軍艦の位置と本船の位置の確認と速度計算を始めた。

幽霊船との死闘

船長は「本船の最高速度は40ノット(75km)軍艦はおよそ30ノット(55km)逃げ延びられる確立は高い」と言うと、燃料をドラム缶から移す作業を客に手伝うように申し立てた。客の二人が船底に向かいタンクに補給を行うために働いた。20分後満タンの合図をしてきた。もう幽霊軍艦は1km付近にきていた。予想外に速い速度での進行がわかった。船長は徐々に船の速度を上げていった。

もう戦艦との距離が徐々に離れ始めると歓声が船全体に響きわたった。しかし船長は必死の形相で船の速度を維持していた。船長は「相手は幽霊だ。どう出てくるか判らない」と言うと前方の波しぶきを眺めていた。40分ほど移動すると戦艦の陰は見えなくなった。

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島影が前方に見えてきた。ホッとして船長が速度を落とし始めたときである。島影の間から。黒い船体が現れた。逃げたはずが逃げ切れて居なかったのだ。速度を落とした船の操舵室の中、船長はあきらめた様子で操舵から手を離した。

船の燃料は後どのくらいかと船底に居る客に聞くと客は「もう燃料は無い、タンク内に在るだけだ。」と無線で答えてきた。船長は無線で海上警察に連絡したしかし答えは「レーダーにも映ってないのにどうして騒ぐ。そのまま直進して島の給油所に向かいなさい」と言う支持と共に無線は切れた。

しかし「物体は現実に在る。先ほど照明弾が船に当たっている。」と船長はつぶやいた。私は「このまま直進すると船は戦艦の正面(中央)にぶつかります。」と言うと船長は「相手は幽霊でも50m以上ある。この船はわずか10m半分以下だ。ぶつかればこの船は沈没する。」と静かな声でつげると島の間に向かうのをやめるために船を停止させた。しかし、船はソウ簡単には止まらない。

船長は右に左に船体を蛇行させて速度をおとして行った。もう20m前には島と島の間に戦艦が立ちはだかっている様子が見えた。10m手前まで来るとようやく停船した。10m先には真っ黒な船体に錆や藻が寄生して、赤緑色に変色した穂先が見える。大砲や機関砲は先端が曲がってしまっていた。そして船体の中央には大きな穴が貫通しており、向こう側の明かりや景色が見えるほどの穴がポッカリと空いていた。

どうして浮いているか不思議なくらいだった。私たちは始めて見る幽霊船に怖さと好奇心でいつの間にか甲板には全員が並んでいた。船長は船が止まると左に一杯舵を切りUターンして幽霊船から遠のいていった。もう夕方である。

船長は「帰航しなくてはいけない。幽霊船の相手をしてる暇は無い」と言うと船首を港に向けて幽霊船から遠のいていった.客たちは幽霊船の話と写真で船内は持ちきりだったが港が近づくと幽霊船の写真が一斉に写真機の中より消えていた。危険にさらされたなどと客は誰一人として感じていた人は居ないだろう。

船長はあの船にはもう二度と遭いたくないと言っていた。もし、あの船にぶつかっていたら、もしあの船が憑いてきたらそう思うと大きな事故につながる。そのことを釣り人の誰もが自覚をまったくしてないその現実の方がもっと怖いとつぶやくばかりだった。

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