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タイの公衆電話で感じた恐怖

タイの公衆電話で感じた恐怖

今は携帯の普及がいちじるしく進み日本でも公衆電話は絶滅に近い。しかしタイではまだ地方に行くと公衆電話は存在している。使う住民も多い。

豪雨の中で

私はある日。都会を離れタイ郊外のカンチャナブリンと言う「戦場にかける橋」の舞台になったところに出かけた。そこは橋と鉄道が有名で後は回りにはタイには珍しい滝が点在するところでも有名でした。その鉄道に乗り往復した時の出来事だった。その日は曇っていて、前の日は大雨が降り鉄橋の下の川は増水して水の勢いが強かった。私と彼女はその鉄道の往復を楽しんでいた。その影響で滝も増水して近づく事ができなかったが二人で居られる時間が楽しく問題では無かった。帰宅の時刻が来て駅に到着した時である。

Engin_Akyurt / Pixabay

先ほどまで曇っていた空から大粒の雨が降り出した。駅の待合所はその雨を避けるために電車に乗らない客までが押しかけて足の踏み場も無いほどごった返していた。その人ごみを避けるために私たち二人は駅の向かいの屋台の軒に足を運んだ。しかしそこも例外では無かった。大雨は二人に降り注いだ。私は濡れないようにと思い彼女をかばい周りを見渡すとポツンと公衆電話BOXが私の目に入った。

電話ボックス

私は「あそこなら、この雨を避けられる」そう思うと彼女に「あのボックスまで走るぞ」と言うと二人して一目散に雨の中走った。そしてようやくボックスに入ると狭いが雨や風は入ってこなかった。二人は雨露をタオルで拭きあった。30分ぐらい経ったが一向に雨脚が収まらな状態が続いている中私は少し狭いボックスの中でイライラし始めた。彼女は真っ黒な空を電話BOXのガラス越しに遠目に眺めていた。

40分が過ぎただろうか?私は外に出て車を公衆電話の近くまで持ってくる事を彼女に提案した。しかし彼女は「もう少しで止むから居ようよ。誰も来ないし二人っきりでしょ。」と言われ私は思いとどまった。電話BOXの中は外の温度と遮断され、だんだん周りのガラスが曇ってきた。周囲の町並みも黒雲の影響で暗くなってきた。とうとう電話ボックスの周りが見えなくなってしまった。息苦しい時間が流れた。

ガラスには相変わらず雨の雫が無数に当たり雨が激しくなってきているそう思った時だ。落雷が近くに落ちた。近くに火柱が出来たと思うとものすごい音が電話ボックスの中にも響き渡った。「ゴロゴロドッカーン」それとほぼ同時に電話BOXの電話がけたたましく鳴り出した。「ジリリリリーン」私と彼女は驚き電話機を見た。

電話機からはベルの音がけたたましいく鳴り響く為、私は鳴りやまない受話器をたまらず取ってしまった。すると受話器から「ククククク」と言う笑い声が脇に居る彼女の耳にも聞こえるほど大きな声で聞こえてきた。

覗き見る目

私は「何だこの笑い声は?」と思い彼女を見ると彼女は震える指で曇りガラスの足元の曇ってない部分を指差した。私は指差す方を見ると大雨の中、下から目が4つ覗いていた。顔の影も無く明らかに目だけが私たちを覗いている。私は彼女の耳元で「早く逃げようと」とつぶやいた。

彼女は金縛りになっているのか硬直してるのか?首を振る事さへできなかった。震える手が私の手の甲にソッと振れた。それを私は合図と受け取り電話ボックスのドアを足と手で蹴破るように開けると彼女の手を引き雨の中車の置いてある駐車場に一目散に駆け出した。殴るような大雨が私と彼女を襲ってきた。振り返り戻る余裕など無い。無心に自動車めがけて走った。自動車のドアノブに手がかかり彼女を先に乗せると私には少し余裕が出た。私は振り返り先ほどまで居た電話BOXを見た。

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すると二人が抜けて軽くなったBOXは土砂と大雨の勢いで川のある方向に動き出していた。私はビショビショの状態で車の中に入ると同時にBOXを支えていた最後の電話線が切れた。濁流が突然BOXの足をさらうように活き良いよく川の方に流れて行った。見る見る内にBOXは川に落ちるとマッチ箱のように右に揺れ、左に揺れやがて濁流の中に消え去って行った。

もし今しがた、私と彼女が脱出しなければ濁流に同じように流され死んでいたかもしれない。命拾いをした私は、車の中で放心状態が続いた。脇で私を揺する彼女に気が行くと急いでその場を逃げるように私はアクセルを踏んだ。

恐怖の雨と落雷

無我夢中で嵐にも似た雨の中、車を走らせていた。先ほどの大雨と滝を通り越し安堵するとフロントガラスには真っ赤に染まる太陽が見えてきた。私も彼女も夕日を見ると落ち着きを取り戻した。車を止め遠のいたカンチャナブリンを見ると雷と雨雲は遠のいていた。私は彼女を見るとホッとした顔が私の目に映った。

私はあの電話BOXでの出来事を振り返っていた。BOXの中で「ククク」と笑って耳に聞こえた声。下から私たちを覗いた目は何だったのか?私たちを助ける為に声をだし、覗いて危険を知らせたのか?それとも河に落ちる事を願っていたのか?それは今となってはわからない。

いずれにしろタイの雨と落雷は怖いと言う思い出と教訓が心の中に残った。

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