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タイ日系フリーペーパーの今と未来

タイ日系フリーペーパーの今と未来

タイ日系マーケットの規模


タイ・バンコクには約20誌のフリーペーパー(情報誌)が発行されているが、それは、在タイ日本人が約7万人以上(未登録者含めると10万人以上いると言われています)も住んでいるからだ。特にタイに住む日本人のうち約8割はバンコク在住。そのほとんどが駐在員とその家族なので、20代後半から40代の働き盛り、かつ、子育てや教育など最もお金を使う世代が、半径数キロ圏内に密集して住んでいる。

想像してほしい、約10万人と言えば、日本の行政区分で言えば「市」。しかも、高齢者はほとんどおらず、消費意欲が強く、会社から手厚い手当てをもらっている日本人ばかりが住んでいる。当然、日本人向けサービスは増え、広告収入で運営するフリーペーパーへの広告出稿につながるというわけだ。ところが、そんな隆盛を極めていたバンコク・フリーペーパー市場で淘汰・再編が始まっているという。実は私も、3年ほど前までとあるバンコクのフリーペーパーを発行する会社に勤めていた。

当時は、バンコク在住の人が運営するwebマガジンで「バンコクの日本フリーペーパー全15誌のまとめ記事」や「日本語フリーペーパーの広告市場規模」なんていう記事が書かれるなど、少しばかりは注目されていたほど、巷では「◯◯の◯◯読んだ?」「◯◯に◯◯が載っていた」「◯◯会社が◯◯に広告出したみたい」など、在タイ日本人の間でも話題になる存在感だったと記憶する。今思えば、すでに当時のタイもインターネット社会ではあったが、となりの晩御飯が気になるほど、密集して住む日本人コミュニティの中では、ネットよりも紙の方が情報伝達率が高かったのだと思う。

そんな日本語フリーペーパー天国のタイで何が起こっているのだろうか?未だに住む日本人駐在員を含む友人・知人や実際にフリーペーパーを発行する会社に勤める方に話を聞いた。すると、だいたいのことがわかってきた・・・

多すぎるタイの日系フリーペーパー


はじめに、タイで発行される主な日本語フリーペーパーを列挙する。

  • DACO(ダコ)
  • 週刊WiSE(ワイズ)
  • バンコクマダム
  • WOM(ワム)
  • newsclip(ニュースクリップ)
  • U-MACHINE(ユーマシン)
  • Araysマガジン(アレイズ)
  • free copy map Bnagkok(フリコピ)
  • バンめし
  • nico labo(二コラボ)
  • 11タイ自由ランド
  • 12Archi+(アーチプラス)

他にも、あるが詳しくは先ほど紹介した記事を読んでほしい。私が記憶しているのはこのくらいだった。タイに住んだことがない人からすれば、「えっ!そんなにあるの?」と驚くだろう。本当なのである。さて、そんな隆盛市場に何が起こっているのだろうか。

印刷媒体からデジタル媒体へ


当然、ネット=デジタルの波は避けらない。タイに送り込まれる日系企業の駐在員も年々、若年化している。タイには約5000社ほどの日系企業が進出し、多くがすでに進出歴が古く、安定運営ができている。そのため、タイは海外駐在先の中では、初心者向けと位置付けられている。若年層の必須アイテムは「スマートフォン(スマホ)」である。もちろん、帯同する奥様もスマホを使いこなす世代だ。

タイは、年間150万人以上の日本人が訪れる人気観光地であり、多くの日本人が住む市場。メディアの情報のみならず、一般人が書くブログやSNS情報が溢れ、下手な日本の僻地よりも日本語情報が溢れている。外で紙媒体をとって、開いて読むよりも、ググって調べる方がはるかに早く、しかも、ご丁寧にマップリンクもあるので、グーグルマップ連動で、行きたい場所も教えてくれる。

すると、紙媒体の価値は検索キーワードを知らないタイ初心者向けの一次情報源に限定されてくるわけだ。飲食、美容、教育、子育てなど日常欲しい情報は、最初はフリーペーパーに頼るものの、慣れた頃には、口コミやweb・SNSといった情報源から勝手に舞い込むようになるはず。そうなれば、同じジャンルの媒体の中で淘汰・再編が始まるのは至極当然の流れ。

タイ日系フリーペーパーの苦悩

製造大国タイだからこそ誕生した、製造業向けフリーペーパー「U-MACHINE」は、FNAというアジアで広く製造業向けメディアを展開している会社に吸収され、今では合併媒体として発行されている。ビジネス向けだった「newsclip」と有料紙の「バンコク週報」は紙媒体を辞めてしまった。駐在妻(駐妻)向け媒体も同じだろう。もともとページ数の少ない「Archi+」は廃刊。「バンコクマダム」の姿も見かけなくなっているという(発刊部数を減らしている?)。

特集が人気だった老舗の「DACO」も隔週から月刊化に移行。その他の媒体も発行部数を減らしているのか、配布箇所も減少傾向にあるという。情報源としての価値としては、月刊化されたとはいえば「DACO」や子育て向けマガジン「nico labo」、女性向けの「Wom」や「バンコクマダム」は以前、巷でも読んでいる人を見かける。

前述の「日本語フリーペーパーの広告市場規模」の中で、圧倒的なシェアを誇る「週刊ワイズ」に至っても、いっときの週刊で100ページを越えていた勢いはなく、最近は80ページほどになっているという。ただし、私がいた当時と変わっていないのが、その浸透率だ。当然、市場の中で唯一の週刊ということで、発行部数や広告数が他誌を圧倒するのは当たり前で、読まれる頻度の高さから「今週のワイズに載っていましたね」という日本人コミュニティの話題のネタの一つであることも変わらないそうだ。それでも、ページ数を減らしていることが市場の変化を物語っている。

タイ日系フリーペーパーの未来


では、タイのフリーペーパーはなくなってしまうのか?少なくともこの先5年はあると思いたい。現在の日本も、出版不況は続いている。新聞業界はもはやボロボロで全国紙だった産経新聞と毎日新聞は目も当てられないし、業界トップを争っていた朝日新聞は韓国絡みの記事への批判で、凋落が止まらないといった様子だ。

タイのデジタルシフトのスピードも加速しているに違いない。キャッシュレス、Eコマースなどを代表する電子決済も当たり前となっていると聞く。それでは、今後5年の間でタイのフリーペーパー市場はどうなるのだろうか。日本からの見解なので、誤差があるかもしれないが、市場の常識からすれば、ジャンルNo.1が生き残り淘汰・再編は続くと思われる。例えば、旅行者やタイ好きに読まれる「DACO」はコアなファンも多いので、生き残るだろう。ただし、月刊化にした以上、今後、部数が伸びることは考えにくいが、ファンを囲い込みながら続くと見れる。個人的にも応援している。

W0Mとバンコクマダムは、微妙なラインだろう。存在価値が被っているので、統合もあるかもしれないが、そうであれば、最近は男性向け情報が多い「週刊WiSE(ワイズ)」が総合誌的な位置付けであることから、ワイズの中に組み込まれ、以前の100ページほどにしても問題はない気がする。そうであれば「nico labo」も吸収合併か?と思われるかもしれないが、子育て中のママにとって、悩みの中心は子育てのみ。他の情報などどうでも良いわけで、子育て特化メディアは生き残る可能性は高い。

老舗の恒常化と大手の変化


これまで話題に出してこなかった「バンめし」は、人間の三大欲求の一つである「食欲」を抑えている点でも、nico laboと同等。ちなみにバンめしは、free copy map Bnagkok(フリコピ)と同じ発行会社なので、安定性は他誌よりは高い。ただし、日本語フリペ広告市場がシュリンクしている以上、楽観視はできない。同様にビジネス誌としてポジションを得ている「Araysマガジン(アレイズ)」も、厳しいながらも続きそうだ。

See Also

ただし、最近ネットでタイを検索して面白い動きが、業界最大手?と言われる週刊ワイズの動きである。まず飲食店で検索をかけると。お馴染みの「さーや」や「ぷくこ」と呼ばれる、飲食と生活情報をアップするブログのほかに、週刊ワイズが浮上してくる。

私がいた頃は、ワイズはwebに弱いというイメージが強かったが、SEO対策でもしているのだろうか、ネット上でも存在感を出しているほか、「WISE TV」なる編集長が自ら表に立つニュース配信動画や「WISE Biz」というビジネス系のウエブメディアを立ち上げたようだ。紙の王者が、ついにデジタルシフトに本腰を入れたのか?。WISE Bizに関しては、まだ少なそうだが、タイ語で企業を紹介するなど、タイ人向けへのテコ入れもしている。

仮に、ワイズのこうした動きが本気であれば、あらゆるタイの日本語情報は「ワイズで事足りる」となってしまえば他誌に勝ち目はもうないかもしれない。ただし、競争原理がなくなる市場はその価値が下がると言われている。ワイズが市場を独占するほど巨大にならろうとも、いずれは足元をすくわれかねない。

ページ・部数・人材の減少


読者が求めるのは、ただひとつ「自分にとって有益な情報」であり、広告主にとっては「売り上げや業績につながる訴求効果」だろう。最近、「パノーラ」というマレーシアで誕生し、シンガポールでも発行するフリーペーパーがタイでも創刊されたらしい。聞いた話だと「ページ数が少なく、空いている場所に広告を打てば目立つかもしれない」とのこと。旋風を巻き起こすかは謎だが、注視したい?※笑。すいません。見たことないので注視はできませんね。

あとは、DACOの編集長が退社するという話もあるし、Araysマガジンの編集長も1年以内に代わったそうだ。退社した人間に聞くのが、皆、給与の低さから、将来のキャリアプランに不安を抱いているという。真しやかには、未払いや給与の遅延も起こっているそうだ。残念ながら、ここでは名を上げなかった媒体の公称部数もほとんどが怪しい。名を上げた媒体にしても、本当に公称部数通り発行しているのかは疑わしい。巷で「最近、見なくなった」という声が増えている。

タイのフリーペーパーを見ていると


こんな記事を書いていると、無性にタイに行きたくなった・・・・お盆休みにはもう一度現地に行って確かめてみたい。日本人が多い上海に1年ほどいたが、これほど日本語フリーペーパー市場が活況ではなかった。日本の普通の新聞社よりも影響力があるのも稀有だ。是非一度、タイを訪れた方は、ネット情報のみならず、日本語のフリーペーパーを手にしてほしい。その圧倒的な情報量には驚くはず。

by 元タイ在住A

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