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かつてブルートレインを牽いた機関車がタイで復活!

かつてブルートレインを牽いた機関車がタイで復活!

〜日本の鉄道ファンが力を合わせてタイをサポート〜

寝台特急「北斗星」の機関車をタイの工事会社が購入した!しかし、鉄屑扱いで取引され、使い方がわからない!

2018年秋、日本から2両の青い機関車がタイの港に着いた。金色の帯を巻き、勲章のように光る星マークが輝く「北斗星」色のディーゼル機関車DD51型だ。タイ国鉄の慢性的な遅延解消と輸送力増強のため、タイ政府が立ち上げた大規模な鉄道路線の複線化プロジェクトを請け負うタイの工事会社「A.S.ASSOCIATED ENGINEERING(1964)社(以下、AS社)」が資材を運ぶために日本から中古機関車を購入したのだ。

しかし、この機関車は2015年の北海道新幹線開業に先立ち廃止になった北斗星を引っ張っていたもので、その後、ミャンマーへ輸出されるはずが頓挫し、長らく放置されていた曰く付きの車輌。所有者はJRからいくつかの商社、ブローカーへと渡り、鉄屑となって取引されたため、AS社には運転方法はおろか、メンテナンスの仕方すら伝わらない取引となってしまった。

北斗星のボディー

日本の鉄道ファンが立ち上がり、タイに技術支援するためのクラウドファンディングを実施!

寝台特急「北斗星」といえば、日本の鉄道ファンなら誰もが知っている人気列車。そのためタイに渡った機関車を見にタイ国内のみならず日本からも鉄道ファンがたびたびAS社の機関庫を訪れた。

根っからの鉄道ファンで長崎在住の吉村氏と、タイで通訳翻訳業を営む鉄道ファンの木村氏もその内の一人で、訪れた日はちょうど試運転があり、吉村氏は映像に記録し、日本に帰って鉄道ファンの仲間に見せた。『この操作方法は、基本とは全く異なるので、故障するのは時間の問題だ。』吉村氏は、ある鉄道技術者からの思いがけない言葉にゾッとした。同時に、木村氏の通訳の元、AS社技術者から聞いた『日本から扱い方を教えてもらえると思っていたのに誰も来なかった』という言葉を思い出した。

大好きな日本の鉄道の技術を信頼してくれたタイ人の期待を裏切りたく無かった。鉄道ファンでも何かできるはずー

2019年夏、吉村氏は、木村氏とともに日本からこの機関車を運転・整備した経験のある技術者をタイに派遣して正しい扱い方を伝えるクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げた。

“タイのDD51北斗星色を支援して両国の友好の星にしたい”

筆者は同時期に仕事の関係でタイに駐在することになった、この機関車が走っていた北海道の鉄道ファンで、縁あってプロジェクトに関わることとなった。最終的に日本とタイの多くの鉄道ファンに共感していただき、目標の1.5倍の資金を集めることに成功。多くのご支援いただいた方々に対する溢れる感謝の気持ちと、本プロジェクトをしっかりと全うしなければいけないという責任を感じた瞬間だった。

タイで整備された「北斗星」色の機関車。鉄道ファンが多く訪れるため、現役時代の色のまま再整備してタイで使うことを決めたAS社の心意気は大変嬉しいものである。

日本の技術者がタイの技術者に使い方を伝授!鉄道への熱い想いが国境を超える!

年が明け2020年1月、ついに日本から鉄道技術者の辛嶋氏が訪タイし、AS社技術者に木村氏の通訳を介しての技術指導を実施した。3日間の指導行程では、毎日行う点検項目、エンジンの正しい起動方法、発車前の確認作業といった始業前に実施する内容から、実際の運転操作の方法、各計器類の見方、非常時の取り扱い等、実際に線路の上を走る際に必要な内容までを座学と実学でAS社技術者へ伝えてもらった。

打ち合わせ現場

AS社技術者は待ちに待った説明ということもあり、必死に覚えようとメモや写真で記録し、積極的に質問をしていた。中でもエンジンを冷やすための水を貯めるタンクが空であったことは衝撃の事実であったが、摩耗する箇所への油挿し、貨車を繋げたときに全てのブレーキが利くようにする設定方法、万が一故障した際に取るべき対処方法等が伝わったことにより、とりあえず動かすことが出来るという状態から、事故を起こすことなく安全に長く使うことが出来る状態へと飛躍的に改善され、本プロジェクトの大きな目的の一つが果たせているという実感がプロジェクトメンバー全員に沸いた。

機関車の各機器の説明と、状態の見方を説明する鉄道技術者辛嶋氏(真ん中上)と通訳の木村氏(右上)、説明を聞くAS社技術者たち(手前)

AS社の主任技術者や現場監督は、二回りも年下の日本人技術者の説明に対して、決して横柄な態度になることなく、真剣な表情で一言も聞き逃すまいと前のめりで聞くばかりか、自身の経験を元に自らの考えを伝えながら納得がいくまで質問する熱心なところもあり、安全に走らせたいという鉄道への熱い想いに年の差や国籍は関係ないと感じる瞬間であった。

プロジェクトリーダーの吉村氏は、「大好きな鉄道への恩返し。趣味であっても好きだという想いがあれば何でも実現できる。鉄ちゃんでも出来る国際貢献はまだまだこれから。」と言い、タイの空の下で第二の人生を歩もうとしている青い盟友をいつまでも見つめた。本プロジェクトは3月に寄付者へのお礼として、撮影会と日本とタイの鉄道の歴史の一つ「泰緬鉄道」日帰りの旅を企画。4月に第二回の技術支援を行う予定だ。

by 小林 涼太郎

日本中で活躍した機関車。しかし、隣を走る列車はまさしくタイ国鉄、異国の地に来た。かつてタイとミャンマーを結んだ「泰緬鉄道」の起点でもあるこの場所には、第二次世界大戦時に日本の蒸気機関車が持ち込まれ、旧日本軍の指揮の元で鉄道の建設が進められた。80年の時を経て、日本の機関車が再びこの地に舞い降り、鉄道建設に使用されようとしている。今度はタイの発展に貢献するために―

プロジェクトホームページ:https://thailandrailway.wixsite.com/dd51thai

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