タイ国民から敬愛されてきたプーミポン国王(9世王)が、10月13日午後に崩御した。タイ国民は深く悲しみ、現在も多数の国民が王宮まで弔問に訪れているところである。11月に入ってからは地方からの弔問客が多く、民族衣装を身にまとった山岳少数民族も多数みられるようになった。
今のタイに、国王は存在するか
さて現在のタイの状況について、外国人が抱く問いの1つが「今のタイに、国王は存在するか、否か?」であろう。プラユット首相により王位継承者が皇太子であることは既に発表されているが、まだ正式には即位していない状態である。このような空白期間は初めての事態である。では現時点では、タイには国王が存在しないのだろうか。
この点について、あるタイ人研究者は「タイ的には手続き面はそれほど重視ではなく、王位継承者である皇太子が存在するという事実だけで十分であり、既に新しい国王が存在するのと同じ状態なのだ」と解説する。また手続き面を重視し、現在の状況について懸念するのは、欧米的な感覚だと指摘する。
タムマサート大学の学位授与式
結論からいうと、学士号については皇太子が学位記を授与した。修士号以上については、前年と同様に9世王の写真を飾り、9世王の写真の前で学位記を受け取るという形をとった。つまり、皇太子が正式に即位していないため、現在も国王は9世王だと理解することもできる。
しかし、学士号の授与式の日に興味深いことがあった。学位授与式の中継を見ていた父兄と思われる女性に「学位記を授与なさっている方は皇太子ですか?」と聞いてみた。彼女は暫く怪訝そうに私の顔を見つめ、「いえ、この方は10世王です」とはっきりと答えた。
9世王は非常に偉大な存在であった。国王の代替わりも、人々の気持ちの切り替えも、徐々に行われていくのかもしれない。