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タイについて少し興味をお持ちの皆さんは、「ガトゥーイ」を知っていると思います。

私はタイの地方都市の大学教員なんですが、新学期に学生たちが私に自己紹介をするとき、「彼ら」は自分のことを日本語で、「オカマ」と言って紹介することが多いです。「彼ら」はこの言葉だけは知っています。

さて、日本で「オカマ」の人たちとの知り合いがいなかった私は、自分の学生としての彼らに興味を持ち、いろいろ調べてみました。また、タイ人の中でどのような扱いを受けているのかも、調べてみました。

性の種類

タイの「性の種類」(呼称)に詳しくない方のために、ここで簡単に説明します。タイの「性の種類」を細かく、その人の性の対象(どんな人が好きか)によって分類すると18種類あるようですが、ややこしくなりすぎるので、少し単純化して説明します。

プシャーイ ・・・ 一般的な男性 女性と付き合う男性 服装は男性 
プーイン ・・・ 一般的な女性 男性と付き合う女性 服装は女性
ガトゥーイ ・・・ 男性が好きな男性 英語はLady boy 日本語はオカマ 服装は女性
ゲイ ・・・ 男性が好きな男性 服装は男性
トム ・・・ 女性が好きな女性 服装は男性 日本語はオナベ
ディー ・・・ トム(女性)が好きな女性 服装は女性

「ガトゥーイ」はどうして生まれるか?

ガトゥーイが生まれてくる原因は、まだわかっていません。現在考えられているのは、だいたいこんな感じです。まず、普通に男の子が生まれる場合、受精のときに中学校で習ったようにXYの染色体のパターンを持って受精します。

そして、XYの染色体をもった胎児は、受精後2~3週間で、自分でテストステロンというホルモンを分泌して、どんどん男の子らしく育っていきます。出産直前に今度はお母さんが作ったテストステロンをもう一度浴びて、男の子になると言われています。

しかし、主にストレスなどが原因で、お母さんのテストステロンを十分に与えられなかった男の子が、ガトゥーイになると言われています。

あなたは人差し指と薬指、どちらが長いですか?

みなさんの中には、2D4D比と言うのを聞かれたことがある方も多いと思います。簡単に言うと、右手の人差し指と薬指のどちらが長いか、その比率のことです。イギリスの学者による研究が最初なのですが、「テストステロン(男性ホルモン)を多く浴びると、薬指が人差し指より長くなる」という研究です。
つまり、薬指の方が長い人は、男性的な性質(攻撃的、浮気性など)を持つという研究です。

タイ人の指の長さ

それで、うちの学生を使って調べてみました。この結果からみると、タイ人の多くは性別に関係なく薬指が長いことがわかりました。そして、タイ人はもともと性の差が少ない、男とか女というのが他の国の人に比べてはっきり分かれていないのではないかと感じました。(大学生のみを対象としていますので、もっと本格的に調査をしないと断言はできません。)

タイ人の指の長さ

自分が「ガトゥーイ」だと気付くのはいつか?

ガトゥーイの学生たちに確認したところ、みんな「ずーっとガトゥーイ」だったと言っています。一般的には自我が形成され始めるのが生後6か月ぐらいだと言われていますから、首が座りはじめたころ、ハイハイはまだできないが、何とか一人で座れるようになったあたりぐらいから、彼らはガトゥーイとして育ってきたようです。

思春期前の「ガトゥーイ」

思春期前の子どもたちは、自分が男とか女だという意識はあまりなく、近所の同世代の子どもたちと遊びます。ですから、ガトゥーイも特に性を意識することなく遊んでいたようです。両親の理解がある家庭で育ったガトゥーイは、その時から女の子用の服を着ていたそうです。ただ、両親の理解が得られない場合は、しかたなく男の子の服を着ていたそうです。そんな彼らを周りの子どもたちは、「オカマ」として普通に受け入れているようです。

「ガトゥーイ」のトイレの事情

小学校の時、トイレはどうするのかと、私はガトゥーイに聞いてみました。すると、小学校の場合、だいたい同じコミュニティー(ほとんどの子どもが知り合い)なので、「彼」がガトゥーイであることは改めて説明する必要もありません。そのため特に問題なく、女性用トイレを使用していたそうです。

しかし、中学校、高校となるとそうもいかないので、男子用の個室を使っていたそうです。通学範囲が広がり、「彼」がガトゥーイであることを「説明することが邪魔くさい」からだそうです。
ちなみに大学生になると、着ている制服によって、トイレを選ぶそうです。(後で詳しく説明します)

中学・高校時代の「ガトゥーイ」は、お尻フリフリ。

ご存じかと思いますが、タイでは、幼稚園から大学まで制服があります。そして、大学生になるまでは、原則その人の戸籍上の性別に従った制服しか着ることができません。私は前にタイの中学高校(マタヨン)でも働いていました。その時は、今(大学勤務)よりずっとガトゥーイの存在が目立っていました。

彼らは服装が男性なので、必要以上に「女性らしさを強調したい」のだと思います。ですから、男子の制服で「お尻をフリフリ」しながら歩くガトゥーイは、どうしても目立ってしまいます。

大学生の「ガトゥーイ」

大学に入学することが決まったガトゥーイは、悩みます。男子学生用を着るか、女子学生用を着るかという大きな問題があるからです。タイでは大学生になると、通常制服は男性用、女性用のどちらを着用してもいいことになっています。

しかし、いくつかの理由で、男性用の制服を着るガトゥーイの方が多いようです。

女性になるためには時間がかかる

一般的なタイの女子学生は、ほとんど化粧をしていません。しかし肉体的には男性であるガトゥーイが、女性になるためにはなかなか時間がかかるそうです。そのため、多くのガトゥーイは、その時間を作れないために、男性用の制服を着るそうです。口紅だけはつけているガトゥーイも多く、大学には男性の制服で、唇がピンクや赤の学生をよく見かけます。

法律的な問題

法律的なことで制約される場合もあります。それは、ガトゥーイは基本的に公務員になれないので、将来教師になりたい学生(教育学部の学生)は、男子用の制服を着なければなりません。教員や公務員の試験に合格してしまえば、あとは比較的自由になりますので、それまでは我慢しているそうです。

大学教員からの指示

教員によっては、ガトゥーイの学生に女性用の制服を着ることを個人的に許さない人もいます。お年寄りの教員に多いようです。そのため、その教員の授業がある日は、男性用の制服を着るという学生もいます。

ホルモン剤について

ガトゥーイは、高校時代ぐらいから、ホルモン剤(女性ホルモン)を摂取するようです。身長を低く抑える薬などもあるそうです。しかし、人によってはそれらの薬の副作用で、頭がボーっとして集中できないとか、感情が高ぶりすぎる、怒りやすくなることがあるそうです。言われてみると確かに、ガトゥーイの学生は、精神的に不安定な子が多いように感じます。

みなさんも夜の町でガトゥーイが、喧嘩をしているのを見たことがある人もいるでしょう。そのためホルモン剤を飲むのをやめる子もいて、肉体的には、しっかり男性というガトゥーイもたくさんいます。

田舎の大学生の生活費

タイの大学の学費は、日本と比べると格段に安いです。バンコクにある有名な大学は別ですが、私の勤めている大学ですと、1学期約2万円の学費です。タイの大学は2学期制なので、年間でも約4万円です。住宅関係は、大学の寮に住めば多少の不便(門限が10時)だったりしますが、1学期間6000円ぐらいで住めます。大学の外のアパートは、月に4500円ぐらいからあります。

親からの仕送りは、週単位か月単位

そんな彼らがもらう平均的な仕送り額は、家賃代別で1か月12000円~15000円ぐらいです。それを1週間ごとにもらう学生と、1か月ごとにもらう学生がいます。ちなみに貧しい家庭の場合、政府からの奨学金(卒業したら返済しなければならない)が出ますが、月額6000円程度です。

タイでも学生の生活は苦しい

食費とその他もろもろの生活費(大きいのは、電気代、テキスト代など)を合わせて1週間3000円ですから、いくら物価の安いタイの田舎でも、生活は楽ではありません。ですから、月末になると、みんなママー(1袋20円ぐらいのインスタントラーメン)を食べています。ガトゥーイ生活は更に大変です。彼らは普通の生活費にプラスして、女性になるための化粧道具やドレス、ウイッグ(かつら)なども必要だからです。

肉体改造はしたいけどお金はない

ガトゥーイはみんな肉体改造(整形手術)に興味を持っています。鼻・目・アゴなどを何とかしたいというのは、ほぼ共通していました。そして、ほどんどの学生は豊胸手術に大きな関心を持っているようです。シリコンを入れて、豊かな胸を造りたいそうです。しかし、下半身に関しては、意見は分かれました。理由は「痛そうだ」というのと、「値段が高い」からだそうです。

彼らによると胸の手術はだいたい10万円ぐらいからできるそうですが、下半身に関しては、60万円から100万円掛かるそうです。大学を卒業したらお金をためて、ぜひ胸は大きくしたいそうです。改造をしていない彼らが「女性」になる時は、ブラジャーを2つ着けたりして、胸を「造る」そうです。

「タイは”ガトゥーイ”に対して寛容だ」という嘘

みなさんは、「タイはガトゥーイに対して寛容だ」という話を聞かれたことがないでしょうか?たとえば、なぜタイにはガトゥーイが多いか?という質問に対して、「タイは文化的に性に対して寛容だから、ガトゥーイがたくさんいるんだ。タイの人はガトゥーイでもトムでも平気で受け入れる文化なんだ」というような使われ方をしているのをよく聞きます。

私もタイに住み始める前は、タイの文化は性に対して寛容なのだと思っていました。しかし、実際にタイ人の生活の中に入ってみると、どうも違うようです。

ダメなんだけど許すマイペンライ文化

タイ人が他人の家に遊びに行った際、履物を揃えないで脱ぐことが多いです。それを見て、タイに来た当初の私は、「日本では履物は必ずそろえて脱がないといけない」と学生たちに繰り返し言っていました。

当時の私は、「タイの親はそのようなことを子どもに教えないのだ」と思っていました。しかし、よく聞いてみると、タイの親も日本の親と同様、厳しく躾はしているようです。その証拠に、お寺や学校などで靴を脱ぐときは、タイ人も履物をそろえて脱いでいることが多いです。

揃った靴

また、実は時間を守ることも重要であることを、タイの親たちもしっかり指導はしているようです。でも、タイ人は時間にルーズな人が多いです。ただ、大学で重要な会議(偉い人が来る会議)などでは、よほどのことがない限りみんな定刻前に来ます。つまり、タイ人は「他人が道徳的によくない行為をしても、それに対して強く批難をしない」という文化を持っているのです。これを私は「マイペンライ文化」と呼んでいます。

「ガトゥーイ」に対してもマイペンライ

私は普通のタイ人の中で生活していて感じるのは、普通のタイ人は、ガトゥーイに対しても「マイペンライ文化」を発動しているということです。一般のタイ人は、基本的にはガトゥーイに対して、ある種の「違和感」をもっていると感じられます。しかし、「マイペンライ文化」があるので、「見て見ぬふり」をしている感じです。

それはちょうどクラスの中に障碍者の学生がいる感じだと思ってもらえると、近い感じになると思います。差別というと、言葉が強すぎるのですが、ガトゥーイに対して「ちょっと違う感じ」をもって接しているというのが、本当だと感じています。少なくとも、ガトゥーイの人たちは、明らかにマイノリティーな感じがあります。ですから、ガトゥーイの学生の友だちは、ガトゥーイだったり、ゲイだったりすることが多いです。

体の大きな「ガトゥーイ」はちょっと怖い

男子学生に、「ガトゥーイの学生と一緒の部屋でも寝ることができるか」という質問をしたことがあります。すると、「自分より体の大きいガトゥーイと一緒の部屋に寝ることには、ちょっと抵抗がある」という答えがほとんどでした。つまり、男子学生はある意味、ガトゥーイを「異性」であると認識しているということがわかります。逆に女子学生に同じ質問をすると、やはりほとんどの場合(小さいころから知っているなど、特に親しい場合を除く)「抵抗がある」そうです。

「ガトゥーイ」は努力家が多い

今まで見てきたように、ガトゥーイはタイの文化の中でも、ある種の「違和感」をもたれている環境にいます。また法律的にも日本などの先進国と違い、性の変更を正式には許されていません。また、性転換手術に関しても、規制がどんどん厳しくなっています。そんな状況を、彼らはよくわかっていて、「普通の人より頑張らないと生きていけない」というのが、彼らの共通した認識です。ですから、彼らは他の学生より一生懸命勉強します。

「ガトゥーイは頭がいい」と言われるのを聞くことがありますが、私はそうは思いません。彼らは、厳しい現状を冷静に受け止めて人より余計に勉強しているから、能力が高くなっているのだと思います。日本の方々も、タイに来られたら、いろいろな場面でガトゥーイを見られると思います。彼らの多くは、女性的な神経の細やかさをもつ、温和で、優しい人たちです。そしてとても努力家で、明るい性格の人が多いです。ビジネス面でもとても役に立ちます。

ぜひ彼らを「マイペンライ文化」とともに、受け入れていただければと思います。

BY ITO

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