選手のみならずコーチ、スタッフらに複数の日本人を配し、“日本流”でチーム強化を図るサッカー・タイリーグの名門・チョンブリーFC。昨年、「六人の侍」として連載で紹介したが、今季はさらに監督、選手と計三人のサムライが加わった。
最後に登場するのは、和田昌裕監督。タイ・プレミアリーグ(1部リーグ)では初の日本人監督となった和田監督のインタビューをお届けする。
「ヴィタヤは尊敬する選手であり指導者」
――まずはチョンブリーFC監督就任の経緯から教えてください。
「去年の11月の頭に、『ヴィタヤさんがぜひ来てくれ、と言っている』ということで話をもらいました。
去年はヴィッセル神戸の副社長という立場でクラブの経営に関わっていたんですが、その前の年までは監督をやっていたので、現場に戻りたいという気持ちはあったんです。
海外でやるチャンスもなかなかないですし、現場にも戻れるということで、やってみようと」
――チョンブリーFCとヴィッセル神戸はクラブ間提携を結んでいます。その関係の中で生まれた話でもあるわけですね。
「それもありますし、もともと僕とヴィタヤは松下電器とガンバ大阪で7年間一緒だったんです。ヴィタヤは尊敬する選手であり指導者。彼がやってきたということは、まず間違いないクラブだろうという気持ちがありました」
技術レベルは高い、問題はメンタリティー
――実際、就任してチームを見ての印象はいかがでしたか。
「もともとタイの選手は技術が高いというのは、昔から思っていました。実際に見ても、選手のレベルは低くありません。特に試合に出ているレギュラークラスの選手に関しては、レベルが高い。メンバーに入ってこない選手との差はちょっとあるかな、とは感じましたが」
――プレー以外の面についてはどうでしょうか。
「ヴィタヤも『ほんと時間を守らない』ということを言っていましたが、そういうメンタリティーのところですよね。日本人は時間にきっちりしているということで、僕をチョンブリーに呼んだのは、そういうところを変えてほしいというところがあると思っています」
まずは規律面の改革から
――そういった面の改革から着手しているのでしょうか。
「そうですね。最初の一ヶ月は、野放しにしていたんですが、年末に一度日本へ帰るときに『年明けからは規律を守ってほしい、遅刻や欠席には罰金を課す、ということを伝えました。
遅刻にしても休むにしても当然、理由はあるわけですから、連絡は入れなさいと。急激に変わるのは難しいですが、選手もその大事さというのはわかっていると思います」
――最初の一ヶ月は野放しにした、というのはなぜですか。
「いきなり来て、ガッとやると、それだけでたぶん選手はストレスです。選手は『この監督どんな監督や』と、僕のことを見てると思う。そのへんは、お互いさぐり合いながらね。
こちらも頑張って、全員に話しかけてコミュニケーションをとるようにしています。同じことを言っても性格によって伝わり方が違うので、それはこれからも続けていきたいと思っています」
(和田監督インタビュー②に続く)