【連載最終回】Naohito Uchiyama バンコクツアーに込めるバンコクの3年間

北海道屈指のテクノ・ミュージックのプロデューサー「Naohito Uchiyama」が初のバンコクツアーを行うことになった。全2公演、4月26日(木)はQ Bar(スクンビット・ソイ11)でDJ、4月28日(土)はGLOW(スクンビット・ソイ23)でオリジナル楽曲によるライブを披露する。同時に二日後のGLOWでのイベントは、バンコクで活動する日本人DJのmAsa niwayamaとHIROO(筆者)による「GIANT SWING」の2周年イベントとなる。

個人的な思い出になるが、2012年のバンコクは、まるで2008年の函館を繰り返しているような感覚になる。

北海道の函館という小さな港町で、あのとき起こった出来事の数々が、形を変えてここに押し寄せてきているような。先日バンコクで沖縄民謡の唄と演奏を披露した“堀内加奈子”、彼女と一緒にライブイベントを企画したりプライベートでよく遊んでいたのも2008年の函館だったし、今回初ライブで来タイする”Naohito Uchiyama”が函館へ来てくれたのも丁度その同じ年だった。

2008年で何よりも忘れられないのは、日本のヒップホップにおける伝説であり、長らく「最後の秘境」と言われ続けたラッパー「Y to the ONE」のこと。Y to the ONE・・・みんなは「ヨネ」と呼ぶが・・・ヨネのサポートDJをその年にしっかり務め、2人で札幌や青森をライブで回った事。

ずいぶん波乱に満ちたツアーだったし、自分たちなりに覚悟を決めて臨んだものだった。しかし、そんな彼はもうこの世にいない。去年の9月に川での事故で亡くなったのだ。

クライマックスは12月24日のクリスマスイブだった。Y to the ONEと2人で潜り抜けてきた試練の果てに待っていた大きなステージ。ずっと自分の音楽的なガイダンスであり続けている札幌のTHA BLUE HERB。函館に居ながら世界中のハードコア・シーンで伝説となっており、函館で暮らすことに誇りを植え付けてくれたHAKODATE CITY HARDCOREよりMUSTANG。その2つを招いての特別なイベント。

ライブの順番的にもヨネと自分はちょうど真ん中になり、もう後には引けなかった。そして、一夜限りの特別なステージは、あっという間に幕を降ろした。全てはあのときそこにいた人たちの胸の中に・・・。イベントタイトルは「GHOST TOWN BRIGHTNESS」、つまり、ゴーストタウンの栄光。夜になるとほとんど人も歩いていないような街に卑屈になっていたわけじゃない。むしろ誇りたいことが沢山あったのだ。ヨネと、ヨネの最も尊敬するラッパーILL-BOSSTINO(BOSS THE MC)の2人にとって、それは「最後の宴」になってしまった。

そんな時間の重さを、恨んでしまうこともあるし、振り返って感慨深くなったりもする。だけど結局、自分は家族のようなバンコクの仲間と、あの日支えてくれた北海道の仲間が大好きなんだと思う。

だからなんとか前向きでいられる。音楽は形がないけど、いろんなものが詰まってる。目の前で音を奏でる人がいたら、それはその人がどこかから持ってきたもの・・・風景だったり、感情だったり、喜びだったり・・・言葉にできないようなもので、非常にすぐれた言葉でもある。そしてまた北海道の友人たちが、海を越えて音を届けにやってくる。

これまでに起こったこと、ずっとずっと考えてきたこと。うまく言えないかもしれないから、まずその音に耳を澄ませてみよう。きっと、これはずっと続いていくことなんだ。

「Naohito UchiyamaバンコクLIVE&DJツアー」

<DJセット>
2012年4月26日(木)
午後11時開始
場所:Q Bar (スクンビット・ソイ11)
料金:500バーツ(2ドリンク付)

<LIVEセット(「GIANT SWING」2周年パーティー)>
2012年4月28日(土)
午後10時開始
場所:GLOW (スクンビット・ソイ23)
料金:300バーツ(1ドリンク付)

Naohito Uchiyamaの音源でお勧めなのは、まずなんといってもTHA BLUE HERB RECORDINGSよりリリースの1st「Directions」とSYNAPSEからの2nd「The Sun Also Rises」の2枚のアルバム。他にもBeatportでも曲をリリースしているし、YouTube上でもビデオクリップをチェックできる。まずこのバンコクでの2公演に足を運び、彼の繊細で情感豊かな音世界に身を委ねてみるのもいいかもしれません。

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