大怪我をした犬 〜 タイノワンコ その10

今年の初め頃に、バンコクのある路地の奥で、一頭の犬が交通事故に遭った。ぶつけたのが誰なのか、車なのかバイクなのか、何もわからない。腰と片方の足を折った状態で、じっとうずくまっていたらしい。近隣の人の話だと、その犬は何日も前からそこでうずくまっていたということだ。

早朝にたまたまその犬を見つけて、すぐに異常に気付いたワイさんは、その犬を車に乗せてガセサート大学の動物病院に連れて行った。すぐに手術が必要だったが、検査をすると健康に問題があり、出血を伴う手術はリスクが高かった。このままにしておけば骨は曲がってくっつき、後遺症が残ってしまうかもしれない。しかし、ワイさんはその犬の命を優先した。

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ワイさんは路地の中の古い一軒家に住むおばさんで、すぐ裏には妹のサワートさんも暮らしている。2人は犬好きで、近隣の野良犬たちに毎日ごはんをあげたり、訳ありの犬を見つけると自宅で保護して世話をしたりもしていた。ワイさんの家にはメス犬が、サワートさんの家にはオス犬が、それぞれ数頭ずつ保護されている。事故に遭ったこの犬はオスだったので、サワートさんのところに預けられた。

モークと名付けられたこのオス犬は、自分で動くことが一切できない状態で、サワートさんの介護を受けた。最初に私が見に行ったときは、以前路地で暮らしていたときよりもずっと痩せてしまっていて、元気もなく、ちゃんと食べて回復できるのか、あるいはこのまま衰弱して…と、心配になるほどだった。

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そのあと、私は一時帰国をして、しばらくモークには会えなかった。バンコクに戻りすぐに様子を見に行くと、モークは3本の足で歩いていた。駆けることも少しならできた。まだスコータイのサンボンアシみたいに力強く自由自在には走れない。でも、自分で動けるようになり、元気いっぱいの様子を見て、私は安心した。

骨は一部ずれてくっついてしまったために、折れた足をついて歩くことはできなくなってしまったそうだ。いつも少しだけ浮かせて歩いている。

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モークは、怪我をする前までは、路地の中で彼の父親であるギーと一緒に暮らしていた。モークがサワートさん宅に引き取られたときに、モークが急にいなくなりギーはどうしているだろうかと見に行くと、ギーの姿はなかった。野良犬だからいつもかならず同じ場所にいるわけではない。日や時間帯を変えて何度も見に行ったが、やはりギーの姿は見当たらなかった。ギーはどこに行ってしまったのだろう。(つづく)

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