BTSトンロー駅からBTSに揺られること四駅、ここバンチャック駅まで来ると流石に外国人らしき乗降客の姿は疎らになる。このところ急速に駅前開発が進むオンヌットからわずか一駅でこんなにもアウェイ感が増すものなのか…
プロンポン、トンロー界隈に住んでいるとよっぽどの用がない限りまず降り立つ事の無い駅であろう。来るとしたら陸運局での運転免許の手続きや、ジムトンプソン アウトレットで一時帰国のお土産探しくらいだろうか。
だが侮るなかれ、実はこの駅の直下にわざわざ足を運ぶべき麺の老舗があるのだ。
駅の改札を下り方向にを抜け、まっしぐらに右手のエレベーターに乗りこむ。扉が開くと正しく目の前に「美味い店」の香りがプンプン漂うファサードが広がる。入り口上部に黒地に金文字をあしらった『發財大丁』の看板が際立つ。字面からきっと縁起の良い意味に違い無いとグーグル翻訳で調べると「富を稼ぐ」とあった。なんともストレートで好感が持てる店名ではないか。
出会った事が無い純一無雑なスープ
BTSの高架下なので雨の日でも濡れずにアクセス可能なのもポイント高し。そう…この店こそが知る人ぞ知るクイッティアオの名店「トン・タイ・シャイ・ファド 發財大丁」。この日は11:45ごろに入店してスムーズに着席できたが五分も経たぬうちにたちまち満席となった。デリバリーの注文もひっきりなしに入っていた。
この店の売りはなんと言ってもスープにある。バンコクにクイッティアオの店はそれこそ星の数ほどあれど、これほど純一無雑なスープには他で出会った事が無い。肉と野菜の旨味が溶け込んだ綺麗なクリアスープ。
注文の際、具はスープの味の邪魔にならないようシンプルな方が良い。
何も加えずにスープの滋味を確かめろ
おすすめのトッピングは豚ひき肉とエビワンタンのみ、あとは少しの薬味があれば良い。名物らしき魚のすり身“ルークチン”も揚げワンタンも要らない。魚肉の香りと揚げ油がスープの風味を変えてしまうからだ。卓上の調味料もコショウ少々とナンプラー数滴垂らすだけで充分。無論、最初の一口は何も加えずにスープの滋味を確かめて欲しい。
僕がいつも指定する麺はたまご麺の“バミー”。こちらは細麺と平打ち麺の二種あるが、どちらも甲乙付け難くうまい。細麺のコシ、スープと絡む平打ち麺のピロピロ感、是非とも両方味わっていただきたい。まず麺を一口すすればどこか懐かしい味の記憶が蘇ってくるに違いない。
そう、それはまさに日本の中華屋にあるタンメンの味だ。ある時僕は思い立ち、生麺とスープをテイクアウトした。これに炒めた野菜と豚肉を加えてリメイク。出来上がったタンメンはバンコク唯一無二の味だった。
思いがけない最高のクリスマスプレゼント
自分のフェースブックを遡ってみると初めて訪れたのは2015年とあった。前々からタクシーで前を通るたびに気になりマークしていたのだが、その日はバイクで前を通りかかったので迷わず入店。一口食べて自分の予感が確信に変わった。その日は図らずも12/25 、この店との出会いは思いがけない最高のクリスマスプレゼントになった。
เต็งไต๋ใช้ฮวด(トン・タイ・シャイ・ファド) 發財大丁
2036/4 Sukhumvit Rd, Khwaeng Bang Chak, Khet Phra Khanong, Krung Thep Maha Nakhon 10260 タイ
+66 2 311 7195