流れ者ロン 〜 タイノワンコ その2

バンコクのある路地から通りに出ると、出た辺りに、もうおじいさんになる一頭の犬がいる。10歳近くにもなる老犬だ。

バンコクの野良犬は、10年も生きれば長生きだ。蚊の多い屋外での生活、不衛生な食べものと水、交通事故の危険、暑さやストレスもあると思う。それに犬は小型のほうが長く生きる。バンコクの野良犬のほとんどが中型の雑種だ。

安全で快適な室内で飼われている小型の愛玩犬、チワワやポメラニアン、シーズーなどのように、15年も生きるようなことはなかなかない。その老犬、ロンは、私の知る限り人生のほとんどをその路地の入口付近で過ごしてきた。

気持ちよさそうなロン

ロンの周辺にはいろいろな人たちがいて、それぞれがいろいろな形でロンに関わっている。お供え用の花輪を売るおばさんと、鍵屋のおじさんは、当番を決めてロンにごはんを用意している。ときどき体を洗ってあげたりもしているみたいだ。

髪留めなどの小物を売るおねえさんは、ロンの具合が悪くなるとクスリを買ってきて飲ませたりしている。爪を切ってあげているところも見たことがある。ロンはセブンイレブンの前で寝るのが好きで、いつもそこにいるからか、一部の買い物客にとってはお店のマスコットみたいにな存在になっている。

買い物に来た人がソーセージなどを買ってロンにあげる姿もときどき見かける。ロン(หลง/long)というのはタイ語で「迷う」という意味で、流れ者の一匹狼のような意味合いで野良犬に付けがちな名前だ。しかし、ロンはどこにも流れず長年そこで暮らし、飼い主のいない野良犬ながら、たくさんの人たちと関わって生きている。

おきゃくを見つめるロン

私もその一人で、担当は牛乳だ。いつからか自然にそうなった。ロンもちゃんとそれを知っていて、私がセブンイレブンのほうに歩いて行くのを見ると、牛乳を飲みたいときには(いつも飲みたいわけではない)よたよたと歩いてついてくる。

どういうわけか店内には決して入らず、自動ドアの前でじっと待つ。ロンが寝息を立てて寝ているようなときには、私は牛乳は買わない。自分の買い物だけをする。しかし、レジに向かうと、寝ていたはずのロンがドアの前に立っていて、私をじっと見ていることがある。

私のにおいでもしたのか、気が付いて目を覚ましそこで待っているのだ。「ギュウニュウ、ノミタイ」、言葉を話せたらそんなことを言うのかもしれない。私は慌ててお店の奥に戻り、ロンが好きなブランドの牛乳パックを一つ持ってくる。

お昼寝するロン

今日、路地の入口を通ったときに、鍵屋のおじさんが袋に入った熱々のガイヤーン(鶏の炙り焼き)を得意げに見せてくれた。半羽、大人が2人で食べられるような量だ。見知らぬ人が買ってきて、ロンに食べさせるようにとおじさんに預けていったらしい。

ロンは、そんなことも知らずにセブンイレブンのドアの前でぐうぐうと寝ていた。鍵屋のおじさんは「熱いから冷ましてから食べさせるよ。たくさんあるから2回に分けて、夜にも食べられるよ」と言った。起きたらおいしいガイヤーンだよ、ゴチソウだ。

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